Jesse Eisenberg as Daniel Atlasこの脚本はアリなのか…?

どんな分野でもプロフェッショナルというのは尊敬に値するものです。どんなに簡単そうにやっていることでも他の人が職業としていることを自分が同じレベルでこなすことはまず無理ですし、到底自分には不可能なものもあります。私にとってはスポーツ選手などになることは物理的に不可能であり、医者や弁護士にもなることはできません。もっと一般的なところでも営業職などが自分にできるとはとても思えないので、今のエンジニアという職が私には向いているのでしょう。

さて、数ある職業の中で私が単純に「凄いなあ」と思ってしまうものの一つがマジシャンです。マジシャンの何が凄いかといって、見せるマジックが凄いというのではありません。巧みな話術で観客の注意を逸らし、見ていないところで素早く正確に器用な手業をこなす、そしてその陰では数え切れないほどの練習を積み重ねている。まさしく私の苦手とすることばかりです。今回観た映画「グランド・イリュージョン」(原題: Now You See Me)はそのマジシャンたちが主人公のストーリーです。
Now You See Me
4人のマジシャンがそれぞれ何者かに場所と時刻が裏に書かれたタロットカードを受け取り、それに従って集まったメンバーは一年後に”The Four Horsemen”としてラスベガスのショーの舞台に立ちます。そのショーのクライマックスは観客の一人をパリの銀行の金庫に瞬間移動させ、そこから紙幣を吸い上げ観客席にばらまくというもの。現実にはありえないものの同時にパリでは金庫が空になっていることからThe Four Horsemenの面々はFBIに拘束されますが、謎は解き明かせないもののマジックでしかないということで釈放されます。ところが観客の中に、他のマジシャンの種明かしを仕事にしている元マジシャンThaddeus Bradleyがいて、FBI捜査官のDylan Rhodesとインターポール捜査官のAlma Vargasは今回の件の種明かしを聞いて再び捜査を続けることになります。

The Four Horsemenのメンバーの1人Daniel Atlasを演じているのは「ソーシャル・ネットワーク」でMark Zuckerbergを演じていたJesse Eisenbergです。この人のクセのある感じは他の役者にはなかなかないものでいいのですが、早口でまくし立てられるとちょっと追いつけませんでした。もう一人、催眠術を操るMerritt Osbourne役のWoody Harrelsonも別の種類のクセがあってこれもよかったですが、Wikipediaの略歴冒頭にある「マフィアの雇われ殺し屋の父と、弁護士秘書の母の間に生まれる。」というのもまた凄いですね…

作品の方は数々のマジックを鮮やかに見せてくれるので映像としては楽しめるものになっていたのですが、終盤になって訳がわからなくなりました。私が英語を理解できなかっただけなのかと帰宅後にいろいろ確認してしまいましたが、どうやらそういうわけでもなく、ちょっとオチとしては説得力のない、というより破綻したものになっているようで、「騙されたと感じるかもしれない」との評もありました。私としても「そりゃないだろう」というもので、ちゃんと説明してもらえないことには到底納得出来ないものです。実際には説明などないでしょうから、モヤモヤしたままになってしまうわけです。そこまでの流れは悪くなかったのでなおさら残念なのですが、脚本として収拾がつかなくなってしまったのでしょうか。よくもまあこのまま公開に踏み切ったものです。