Space, the final frontier.
スター・ウォーズと並ぶスペースオペラの代表作といえば「スタートレック」シリーズにほかなりませんが、むしろスター・ウォーズよりも長い47年もの歴史を持ち、アメリカでは特に中高齢者を中心に高い人気があります。最初のテレビシリーズが始まった1966年には私もまだ生まれていませんが、その当時からのファンと、その後のシリーズのファンとで非常に厚い層ができています。先日、そのスタートレックの映画最新作「スター・トレック イントゥ・ダークネス」を観に行ってきたのですが、劇場内の半数ほどが高齢者で、しかも女性が多いのに驚きました。杖をついて歩くようなおばあちゃんもいたりして、伝統あるシリーズとはいえ、J.J. Abramsの手によって最新のSF作品になっているのに刺激が強すぎないのだろうかと余計な心配をしてしまったほどです。
前作「スター・トレック」はJames Tiberius Kirkが宇宙船U.S.S. Enterpriseの艦長になるまでを描いていたわけですが、今回はその後の若き艦長としての活躍が描かれるものになっています。彼のクルーや艦を引き継いだChristopher Pike少将らからは厚い信頼を受けつつも、彼の自由奔放さには艦隊も手を焼いているといったところでしょうか。しかし、艦隊本部が攻撃を受ける事態に至り、またKirkの活躍の機会が巡ってくることになります。
映像としては、スタートレック・シリーズでの艦内の様子というとこれまではいかにも未来的で平面的なものが多かったのではないかと思いますが、今回は機関部などのシーンが多く登場し、機械的な構造が描かれていたため現在の技術の延長上にあるように感じられ、かつてない現実感があったように思いました。また、ワープの表現については今回もまた新しい表現が見られました。今回も「シュッ」と艦は飛んでいってしまうのですが、その後に青い航跡を残していくのです。これは「行ってしまった」というにふさわしい表現だと思います。
この作品も合間合間にコミカルな会話を挟んで緊張感を和らげており、そのたびに劇場内のあちらこちらから笑い声が上がっていました。またシリーズにお馴染みの人物が明らかになった時には歓声が上がり、劇場では一体感のようなものすら感じられました。決してマニアというわけでは無さそうな普通のおじさんおばさんたちがこれだけ夢中になれる作品というのはやはり素晴らしいものです。このスタートレックは旧シリーズとはパラレルワールドにある設定なので他の作品とは一部つじつまの合わないところがありますが、そんなことは大した問題ではなく、むしろその違いやその展開を論じて楽しむことができるような懐の深さがファンにもあるような気がします。
それにしてもJ.J. Abramsはすっかりこの老舗シリーズを蘇らせたものですが、今度は2015年公開予定のスターウォーズ・エピソードVIIを監督することが決まっています。George Lucasが作り上げたスターウォーズの世界が変わってしまうことを危惧しているファンは少なくないと思いますが、J.J.ならば新しい風を吹きこんでこれまでとは違う魅力のある新しいシリーズをスタートしてくれるのではないでしょうか。スタートレックの新作を観てスターウォーズの新作が楽しみになるというのも妙なものですが、J.J. Abramsがこの2つとも監督してしまったら、もはやスペースオペラを作らせたら右に出るものはいない、ということになってしまいそうですね。