Ender's Gameこのオチは知っているような気がする。

あまり評判を耳にしない状況で、ある映画が観るに値する良作であるのか、観て後悔するような駄作であるのかを判断するのは難しいものですが、判断材料の一つになりうるのは著名俳優が出演しているかどうかでしょう。もちろん、あえて無名の俳優ばかりを起用して先入観を排除したりするテクニックもありますし、どうしてこの人がこんな作品に…というような例外もあるのでそれだけで判断することはできませんが、作品を選ぶようなこの俳優が出演を承諾したのだから少なくとも脚本は良いのではないか、というようなことは言えるのではないかと思います。

今回「エンダーのゲーム」を観てみようと思ったのも、Orson Scott Cardによる有名作品を原作としているということもありますが、決め手となったのは予告編を見た時にHarrison Fordが出演していることがわかったからでした。今でも毎年1作品ずつくらいのペースで出演しているようなのである程度の当たり外れはあるでしょうが、まだ読んだことはないものの原作も有名ですし…ということで観てみることにしました。

時は22世紀、80年ほど前に地球は異星人Formicsの襲撃を受けてそれを退けながらも大きな人的被害を受け、その後の再襲撃に備えて優秀な士官となる子供を見つけて育てるためのプログラムが組まれていました。そこで見出されたのが優秀な能力を持つAndrew “Ender” Wigginで、彼は軌道上の訓練施設へと連れて行かれ、そこで同じような士官候補生の子供達と出会います。Enderはその中でも頭角を現して次々と昇進を果たし、そしてついに最終試験となる戦闘シミュレーションに臨み…というようなストーリーです。

舞台が未来なので無機質でいかにも未来的な映像ばかりで、セットやCGにも相当予算がかかっているのではないかと思われます。Formicsとの戦闘シーンなどはほぼすべてCG映像でしょうが、こういったシーンにも以前ほどの経費はかからなくなっているのでしょうか。訓練場がガラス張りになっている必然性が分からなかったりはしますが、確かに閉鎖空間でやっていると地味になってしまうので演出的には必要なのかもしれません。
Ender's Game - Asa Butterfield as Ender and Harrison Ford as Colonel Graff
しかしあくまで士官候補生の養成施設なので、この訓練場で行われる白兵戦はただの手段でしかなく、実際に求められているのはそこで用いられる戦術なのですね。作品中でもEnderが用いた戦術が実戦に応用されて成果を収めています。映像的に見栄えのするように作られていますが、本質的には非常にシンプルなものかもしれません。

作品全般にわたって、ゲームが重要な要素になっています。というよりも、最初から最後までゲームしかないとも言えます。ゲームを通じてEnderは見出され、評価され、成果を収めます。戦闘シミュレーションをゲームと言ってしまっていいのかどうかはわかりませんが、私はこの作品を観ていて、人がゲームをしているのを見ているだけのような気がしてしまいました。今ひとつ深みを感じることができなかったので原作を読んでみるべきかと思ったのですが、日本ではしばらく絶版になっていたものが映画化を期に今週新訳版が発行されることになっているようです。旧版は1冊だったものが上下巻に分けられてしまったのも何だかなあという感じですが、機会があれば読んでみようかと思います。

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後は終わり方が少々蛇足だったような気がしました。続編へ繋げようとしたのかもしれませんが、どう終わらせるべきかが分からなくなってしまったようにも感じられてしまいます。原作はシリーズ化されていて未だに続いているようなので、本作のヒット次第では当然続けて行きたかったのでしょうが、ちょっと難しいかもしれません。

細かいところでひとつ注目したのはEnderがメールの文章を入力するときに使用していた入力インタフェースです。iPadのようなタブレットを使用していたのですが、右手の指を動かすだけで腕は動かさずに文章を入力できていました。こういうものはあまり見たことがなかったので新鮮でしたが、これが実現できればなかなか効率的なものになるのではないでしょうか。Star Trekのパネルはあれだけ限られたボタンを順に押すだけで何でも入力できてしまい非常に不思議なのですが、それよりは現実味があるかもしれません。