Gravity彼は虚空の彼方へ…

スペースシャトル計画が終了してしまったことで現在有人宇宙飛行を行っているのはロシアと中国だけになってしまっています。技術的にはこれらの国にできて日本にできないということはないのでしょうが、その膨大なコストと大きなリスクと、それによって期待される成果とを天秤にかけると踏み出せないということでしょう。アメリカですら一旦終了せざるをえないものなのですから、むしろ今だに経済援助を受ける状況にある中国が行うべきものではないはずです。

さてそれはともかく、今回はスペースシャトルのクルーが遭遇する絶体絶命の危機を描いた映画「ゼロ・グラビティ」を観てみました。映画館の予告では目にしていたものの、前評判が入ってこないのでどうなのかと思っていたのですが、実は第70回ヴェネツィア国際映画祭オープニングを飾り絶賛を受けたとのことなので、それならばと観てみたところ、なかなか素晴らしい作品でした。

ストーリーとしては、スペースシャトルのクルーRyan StoneとMatt Kowalskiの二人が船外活動中のところ、ロシアがミサイルで破壊した人工衛星のデブリが別の衛星を連鎖的に破壊して制御が効かない状態になるという事故が起こります。高速で周回するそのデブリはシャトルもろとも二人を襲い、二人は広大な宇宙空間に投げ出されますが、宇宙遊泳用のスラスターを装着していたKowalskiはStoneを見つけてハーネスで繋ぎ、なんとか地上へ帰還するためにISSへと向かいます。しかしその後も次から次へと問題が起こりますが、はたして生還できるのでしょうか…
Gravity - Sandra Bullock as Dr. Ryan Stone
この映画で驚くのは、生きた状態で顔が写っているのはStone役のSandra BullockとKowalskiを演じるGeorge Clooneyの二人だけだということです。これによって、宇宙というのがそれだけ孤独な世界であるということが強調されているような気もしますが、ここまでキャストの少ない作品は初めて観たように思います。しかし、出演者へのギャラは節約できたかもしれませんが、その分大道具小道具やコンピュータ・グラフィックスには相当な費用がかかっていることは間違いないでしょう。宇宙空間が舞台なので、当然無重力状態での描写がほとんどになっていますが、その映像には全く違和感がありません。ただ、船内に色々なものが漂っているのは大丈夫なのかと気になりましたが、それくらいです。

それにしても、この作品はこれまでに観た宇宙を舞台にした映画の中で、最も真実味のあるものなのではないかと感じました。実際にはあるデブリが衛星に衝突する確率はかなり低いものなのでしょうが、軌道上にはすでにたくさんのデブリが存在しますので、似たような事故はいつ起こってもおかしくないのかもしれません。大事故を防ぐためにある程度の大きさのデブリについてはスペースガードによる監視が行われていますが、無数に存在する小さなものは数多く衝突しているとのことで、今まで無事に済んでいるのは奇跡に近いようなものにも思えてきます。