現実はさらに困難なのでしょうが。
学校での子供同士のいじめが社会問題となってから久しいと思いますが、それは何も日本だけの問題ではありません。私も子供たちを編入させるにあたって、アメリカの学校でいじめと差別に関するポリシーについてほとんど最初に説明を受けました。ただ、私はその時に日本人の子供たちがアメリカの学校でいじめる側に回るということを想像できなかったので、あまり真剣な態度では聞けなかったと思いますが、いじめの中心ではなくても知らず識らずのうちにでも加担してしまうということは想定すべきだったかも知れません。
さて、今回観たのはアメリカの学校での差別といじめの問題を題材とした2017年の映画「ワンダー 君は太陽」です。
本作はR. J. Palacioによる小説「ワンダー」を原作にしたものですが、あらすじとしては生まれつきの難病で顔面が変形してしまっており、27回の手術を繰り返してきたAugust “Auggie” Pullmanが10歳で初めて一般の学校へ進学し、一部からはいじめを受けつつも家族に支えられて少しずつ友人を増やしていく、というような特にひねりのない素直な話です。したがって面白いという映画ではありませんが、心のきれいな人は感動できるのではないでしょうか。
ただ、映画としてはちょっと凝ったところがあって、部分的に主人公を切り替えてその人の視点からの出来事として描いていて、その時その人がどう考えていたのかということを描写しています。これはあらゆる出来事には関わる人の数だけ見方があって、一見単純なようなことでも背景には様々なことが隠れている、ということに気づかせてもくれて良いのではないかと思いました。
なお本作の主演はAuggieの母親を演じたJulia Robertsということになっているようですが、これは俳優の序列の上でそうなっているだけで、物語の主人公はあくまでAuggieであり、彼を演じるJacob Tremblayの演技が光る作品となっているのではないでしょうか。また、他の子供たち、特にAuggieの親友となるJack Willを演じていたNoah Jupeの演技も非常に良かったのではないかと思います。
ということで、本作は実際に難病による障害を抱える人達からは「感動ポルノだ」というような批判もあるとのことで、確かに私も「感動するように作られた話」というように感じてしまいました。本当は障害とその困難な現実に対する理解を深めることもできるような内容になっていたら良かったのだろうと思いますが、本作ではきれいにまとめすぎたのかもしれません。