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直島へ

再びアート。

例年私は家族の誕生日と結婚記念日には休暇をとって、大抵は妻と二人でランチを楽しむことにしているのですが、今年は次男も高校生になって構う必要がなくなったということもあり、ちょっと長めに時間をとって足を伸ばしてみようということになりました。そこで、以前妻が行ってみたいと言っていた岡山沖にある、香川県に属する直島へと行ってみることにしました。直島へは宇野港から四国汽船のフェリーで20分、旅客船で15分という近さになります。このフェリーと旅客船の乗船券は共通ですが、時刻により使い分けられていて乗船場所が異なるので、時間に余裕が無いときは注意してください。

さて、直島に何があるのかというのは今さら説明するまでもないと思いますが、ベネッセアートサイト直島としてベネッセが運営するアートの施設が島内に点在し、島全体がアートで盛り上げられているような感じです。今年の正月に訪れた犬島と同じプロジェクトの、その本拠地とも言えます。島自体が犬島よりもだいぶ大きく、高低差もあるので歩いて回るのは大変なので、今回は港のすぐ近くで電動アシスト付きのレンタサイクルを1日1000円で借りましたが、これは大正解だったと思います。バスで回ることもできますが、時間に縛られることなく、電動アシストで坂もグイグイ登れるのでほとんど疲れることもありませんでした。

まず最初はANDO MUSEUMへと行ってみました。入り口が周囲の民家にあまりに溶け込んでいて、私達は1回通り過ぎてしまいましたが、なんとか中へ入ってみるとこの建物自体が木造民家の中に打放しコンクリートの構造という安藤忠雄の作品で、その中に他の安藤作品のいくつかを紹介する展示があるというものでした。住宅として使えるような空間にはなっておらず、全く実用的ではありませんが、その空間の遊びを楽しむということになるでしょうか。内部の展示はそのおまけでしかないと思います。

昼食はこのすぐそばの玄米心食 あいすなおというごはん屋さんで摂りました。こちらの売りは玄米を小豆と一緒に圧力釜で炊き上げ、それを3〜4日保温して寝かせているという玄米ご飯で、まるでもち米の赤飯のように本当にモチモチで美味しいです。私達は「あいすなおセット」という看板メニューを選びましたが、このごはんが完全に主役で、ごはんだけで美味しく食べることができます。おかずも豆腐と野菜のみの優しいビーガン対応のものですが、郷土料理の「呉汁」という味噌汁も非常に美味しく、魚や肉がないからといって物足りないということは一切なく、私はかなり満足しました。

食事の後はまた自転車をひとこぎして島の南西方向へと向かい、黄色い「南瓜」とベネッセハウスショップを見てからシャトルバスに乗って地中美術館へと向かいました。建物の大半が地中に埋まっていて見えないようになっていることからその名がつけられていますが、この建物自体も安藤忠雄によるもので、作品の一つとなっています。そしてその内部にはClaude Monet、James Turrell、Walter De Mariaの3名の作品だけが展示されているのですが、建物はこれらの作品に合わせて専用に設計されたものとなっており、建物と一体になって恒久的に設置されたものとなっています。

それだけに作品の演出は最高のものとなっており、有名なMonetの「睡蓮」が展示される部屋に足を踏み入れたときには文字通り息を呑みました。自然光のみで照らされているというその空間は圧倒的です。Turrellの「オープン・フィールド Open Field」という作品は得も言われぬ感覚を楽しむことができますし、「オープン・スカイ Open Sky」では実際以上の空間の広がりを感じることができます。ここでは「オープンスカイ・ナイトプログラム」という日没前後の光線の変化を楽しむことができるというものがとても良いそうなのでいつか行ってみたいものですが、その場合は島内での宿泊が必要となりますね。De Mariaの作品はヨーロッパの教会にも通じる荘厳さがあり、ある種の宗教的な感覚を感じてしまいました。

このあとは来た道を逆にたどって宮浦港の方へと戻り、「I♥湯」の前を通ってアカイトコーヒーで一休みしてから自転車を返し、フェリー乗り場でお土産を買って帰りました。振り返ってみるとこの日は普通の木曜日だったせいかどの施設でも人が少なく、行きの旅客船に乗ったときにもあまりに乗客が少なくて不安だったくらいなのですが、ゆっくりと楽しむことができたのがとても良かったです。また、そのせいなのか日本でのブームが去ったからなのか外国人の比率が高くなっていて、感覚的には観光客の半分以上が中国や欧米からの外国人でしたが、受け入れ体制は問題ないのかちょっと気になってしまいました。最近は京都などの定番観光地以外も世界に知られるようになって賑わっているのは良いことですが、ここに限らず外国人の間でがっかりスポットになっていないかも心配です。

アートの島・犬島と日生のカキオコ

程よく充実。

先日、デイリーポータルZのデジタルリマスター版(2007年の記事を写真画像を大きくして再掲載)として公開された「日生のカキお好み焼きを食べてきた」という記事を見つけ、以前食べに行ってとても美味しかったので「年明けにでも食べに行こう」とFacebookでシェアしたのですが、この時会社のZさんから食いつきがあり、この正月休みの間に一緒に食べに行こうということになりました。自宅から日生までは一般道でも1時間強で着いてしまう距離なのですが、せっかくなのでどこか寄るところはないだろうかと考えたところ、前からちょっと気になっていた犬島がいいのではと思いつき、行ってみようということになりました。

犬島へは宝伝港から高速船に乗って渡ることになりますが、10分足らずで着いてしまいます。また車で渡ることはできませんが、とても小さな島なので歩いて回っても十分なので、宝伝港周辺にある有料駐車場に停めていくことになります。フェリーの代金は300円、往復とも宝伝港で係の方に現金で支払うことになりますので、小銭を用意しておいた方が良いようです。

犬島には何があるのかというと、有名な直島とあわせてベネッセが運営するアートの島となっており、島内に現代美術作品が点在しています。作品は瀬戸内国際芸術祭の一環で製作・展示されているものですが、トリエンナーレ形式で3年に一度開催されるもので前回は2016年、次回は2019年なので今はちょうど端境期であり、また直島ほど有名ではなく規模も大きくないので落ち着いている状況です。

私も特に現代美術に造詣が深いわけではありませんが、芸術などというものは個人個人が思いのままに楽しめば良いものだと思っているので、難しいことは考えず直感で捉えるようにしており、「これはなんかいいな」くらいで楽しんでいます。当日は天気も良かったのでブラブラと散歩がてらアートを鑑賞するという感じで島内を回りましたが、私が特に気に入ったのはF邸「Biota (Fauna/Flora)」です。館内では撮影禁止とのことなので写真に収めることはできませんでしたが、「Fauna」の部分がなんとも言えない優しい雰囲気を持っていて好きです。

また、最も大規模なのが犬島精錬所美術館という、20世紀の初め頃に稼働していた銅の製錬所の遺構を利用したもので、美術館全体が「ヒーロー乾電池」という一つの作品になっています。三島由紀夫をモチーフにした作品で、三島作品をちゃんと知っていればもっと楽しめたのだろうと悔やまれますが、そうでなくともなかなかグッと来るものがあり、見に行った甲斐があったと思います。なお、作品のタイトルである「ヒーロー乾電池」の箱が書棚の上にひっそりと置かれているのを発見しました。

週末に限り、美術館では犬島で生まれ育ったおばあちゃんが島の歴史などについて解説してくれるということだったのですが、本土に戻る船の便数が少なくタイミングを逃すと1時間以上待たなければならず、作品を見終わったところでちょうど船の出発10分前だったので急いで港に戻って本土に渡りました。このため夕食までにちょっと時間ができたので近くの西大寺観音院を軽く見学し、その後満を持して日生のカキオコに挑むことにしました。

私は2年ほど前にも一度、カキオコを食べに行ったことがあり、その時に入った「タマちゃん」でもとても美味しくて満足したのですが、今回はまた別の店に行ってみようということで、「カキオコ発祥の店」を謳うほりに行ってみることにしました。ここも有名店の一つなので週末の昼時には長い列ができるようですが、午後4時頃という中途半端な時間に入ったためすぐに座ることができました。しかし、地元の方々に親しまれているらしく、そんな時間でも満席に近い状態でした。

私たちはカキオコのカキ増量玉とカキモダン焼を注文してシェアすることにしたのですが、最初に私があえてカキオコと違うものにしようとしてカキちゃんぽん焼をお願いすると「お好み焼きじゃなくていいのか」と言われてしまい、お勧めなのであればということでモダン焼きに変更したのでした。地元民ではないのでよくわかっていないと思われたのでしょうが、親切心で教えてくれたことはわかったので悪い印象はありません。

焼いているところを目の前で見ながらしばらく待っていると、私たちの前にカキオコとモダン焼がやってきました。お好み焼きの上にたっぷり10粒の牡蠣が載り、その上に塗られたソースの照りがさらに食欲をそそる美しさです。何枚でも写真を撮っていたくなりますが、そうも言っていられないのでできたての美味しいうちにさっさといただくことにします。カキオコの素晴らしいのは、牡蠣を焼く時にお好み焼きの生地で蒸し焼き状態になるため、牡蠣が縮まずぷりぷりした状態で焼き上がっているということです。今回は増量したことで1人10粒もの牡蠣をいただくことができて、腹持ちのいい粉物でもあり、質量ともに大満足で帰路に就くことができました。

ということで、播磨地方からの日帰り旅行の理想的なプランとなったわけですが、カキオコだけであれば会社帰りにも行けないことはない距離なので、この冬の間にでももう一度、また別の店を試してみたいと思います。また、犬島の方は今回の旅でほぼ網羅できたので、今度は直島の方へ足を伸ばしてみたいところです。

Mackinac Island

ミシガン定番の観光地らしいです。

ミシガンには日本でも知られているような観光名所というものがほとんど無く、日本から来た人を連れて行くにも手頃なところでは悪名高いデトロイトのダウンタウン、GM本社ビル、フォード博物館くらいのところで、その他になるとちょっと足を伸ばしてナイアガラの滝にまで行ってしまいます。しかし、それもわざわざ見せたいというようなところがないだけで、もちろん住んでいる人にとってはそれなりに名所というものはあります。Frankenmuthしかり、Hollandしかりといったところですが、ミシガン育ちの米人同僚も「独特なところだからミシガンに住んでいるならぜひ行くべきだ」と言うのはミシガン州のアッパー半島とロワー半島の間の海峡の脇にあるマキノー島Mackinac Islandです。私もここには前から行きたいと思っていたものの季節を選ぶのでなかなか行けず、ようやく先週のメモリアルデーの休日を利用して行くことができました。

デトロイトあたりからは250kmほど北上したところになるので気温が若干低く、避暑地として人気の有るところです。この週末のミシガンはとても天気が良く、デトロイト付近は日中の気温が27℃まで上がったのに対し、マキノーでは18℃あたりまでしか上がらず、日向は太陽の日差しが強く、涼しい風が心地よいくらいでした。

島へはロワー半島のMackinaw Cityかアッパー半島のSt. Ignaceからフェリーに乗って渡ることになりますが、私達はMackinaw Cityの方から乗ることにしました。フェリーの運航会社も3社あるのですが、接客がよく駐車場もフェンスで囲われていて安心、という米人のレビューを見てStar Lineという会社にしたのですが、確かに接客はフレンドリーで親切丁寧、駐車場は発着場のすぐそばで便利な上に、至近距離なのにシャトルバスが運行されていて楽ちんでした。また船に乗って動き出すと思っていた以上に加速が良くスピードが出るのでびっくりしたのですが、後ろを見てみると船体よりも高くまで水を吹き上げていてまた驚きました。ハイドロジェット推進だそうですが、こうして高く吹き上げる意味は何かあるのでしょうか。

船体は何種類かあるようですが、行きに乗ったものは3デッキあり、天気もいいし一番上のオープンデッキに乗ろう…と思ったのは実は失敗でした。予想以上にスピードがある上、水の上の空気は非常に冷たく、皆ブルブル震えながら対岸に到着するのを今か今かと待っていたような感じになってしまったのでした。

ところで、この島では自動車やバイクが禁止されていて、島内の移動や荷物の運搬は徒歩、自転車、馬車に限られているというのが特徴的なところです。船を降りて発着場から出ると賑やかなダウンタウンの通りになっているのですが、道路を行き交うのは20人位乗れる大きな馬車で、それを大きな荷役馬が引いています。この光景は確かに独特でした。この馬車に乗ると島内の観光スポットをいくつか周ってくれるのですが、私達はこれには乗らず、レンタサイクルを借りることにしました。

レンタサイクルは私と妻が1台のタンデムに乗り、子供達はそれぞれ普通の自転車に乗りましたが、タンデムは小回りが効かず、島内の内側にある坂を登ったり、林の中の小道を走ったりするには不向きでした。マキノー島は米英戦争の戦場となっており、マキノー砦という史跡もあるのですが、砦というのは高台にあるもので、そこへ至るまでにはちょっとした急坂を登らなければなりませんでした。

しかし砦には子供達が興味を示さなかったので前を通り過ぎるだけにして、もう一つの名所になっている「アーチロック」へ向かいました。写真で見るとアーチ状になった岩の向こうに青い海が見えてとてもきれいな感じなのですが、実際に見てみるとその事実に間違いはないもののアーチがすぐ目の前に現れてあっけなく感じてしまいました。アーチの数メートル手前に鉄柵があり、そしてアーチの右側には展望台が設けられていて、雄大な自然の中にあるという感じではまったくありません。誰も嘘はついていないけれど…という感じでしょうか。

その後は米英戦争時に英軍が上陸した場所であるBritish Landingというところから湖岸に出て、そこからちょうど島の半周ほどを湖岸沿いに走ってダウンタウンに戻りました。ここで閉口したのが飛び回る体長1cmほどの虫の大群です。最初は島内いたるところに落ちていた馬糞のせいかと思ったのですが、水辺にしかいないし、島を出て半島側に行っても湖岸の公園などには大群がいたので何かと思っていたところ、どうやらカゲロウの仲間らしく、この時季に毎年見られる光景だそうです。特に刺すわけでもなく、鬱陶しい以外には無害なのですが、あまりの数なので相当不快に感じられ、我が家によるマキノーの評価はガタ落ちとなりました。

その後はまたフェリーに乗って半島へ戻り、アッパー半島とロワー半島の間を結ぶマキノー橋のたもとにある灯台跡へ行ってみたりもしましたが、そこでも虫の大群に遭遇して1分足らずで車に逃げ帰ったような感じです。

半島側のMackinaw Cityには五大湖で活躍する沿岸警備隊の砕氷船、USCG Mackinaw WAGB-83が春から秋まで係留されていて、船内を博物館として公開しています。「期待以上に面白かった」というレビューが並んでいるのを見てこれを見に行ってみたのですが、確かにこうした客船以外の船に乗る機会というのはなかなか無いので、貴重な経験になりました。進水から71年経っている古い船なので歴史の感じられるところも多々あり、私が特に興味深く感じたのは対向ピストン式2ストロークディーゼルという馴染みのないエンジンです。こういうテクノロジーの機構が未だに現役であるということも、こういう機会がなければ知りませんでした。

この後は最後にマキノー橋を通ってアッパー半島に渡り、Straits State Parkという州立公園の展望台から橋を眺め、そしてそのまま自宅へ戻ってきました。アッパー半島に入ると格段に田舎っぽくなり何もないところでしたが、一度は足を踏み入れなければと思っていたので、ちょっとした達成感はありました。ひょっとしたら、というよりおそらくもう二度と行かないような気がしますが。

ということでマキノー島の旅、あの虫の大群さえいなければかなり良い感じだったのですが、湖岸の別の地域に行った人も同じような状況だったらしいので仕方ありませんね。ついていなかったということで。