RawShooter私が初めて買ったデジタルカメラは、35万画素が普通だった当時としては高性能だった81万画素のDSC-X1という三洋のカメラでした。携帯電話の小さなカメラでもメガピクセルが当たり前、高性能機では200万画素もあったりする今となっては何とショボい性能かという感じですが、当時はそれでもそれなりに満足して使っていたものです。その後しばらくしてオリンパスのC-4040ZOOMという400万画素のカメラを購入し、そして今はペンタックスの*ist Dsを使用していますが、このカメラは600万画素です。

というように今も昔もデジタルカメラの性能を表す指標の一つとして「画素数」というものが使われてきているわけですが、この1画素というのが画像の1ピクセルに対応する、というのはありがちな誤解なのではないでしょうか。一般に撮像素子としてよく使われているCCD(Charge Coupled Device = 電荷結合素子)やCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor = 相補形金属酸化膜半導体)のイメージセンサというのは光を電気信号に変換する素子ですが、ここで変換されるのはあくまで「光の強さ」であって、色までは変換することができません。そこでよく使用されるカラーCCDなどでは、格子状に並んだセンサにRGBのカラーフィルタをかけ、各画素からそれぞれ赤、緑、青の光の強さを得ることができるようにします。そしてその情報をデジタル信号処理によって補完することで、初めて色情報を持ったデジタル画像を得ることができるようになるわけです。従って、画像の1ピクセルが持っているのは1/4画素分の情報だけであり、3/4については信号処理により得られた計算値でしかないということになります(1/3でなく1/4なのはGの画素がRBの2倍あるため)。

この例外としては、特に放送用のビデオカメラなどの高画質・高感度機で使用される、入力された光をプリズムで分光しRGBそれぞれ別のCCDで撮像する3CCD方式や、SIGMAのカメラで採用されているFoveonという1ピクセルでRGBを取り込むことができるイメージセンサがありますが、これらはいずれもコストがかかるため業務用や一部高級機などで使用されているのみであまり一般的ではありません。

ということで、このイメージセンサの各画素の情報をデジタル画像に変換するための信号処理の技術・性能がデジタルカメラの画質を大きく左右することになるということがわかるかと思います。同じメーカーのCCDを使用しているカメラであっても、画質に差があるというのは光学性能の部分もありますが、信号処理技術の差が現れているということでもあります。JPEG形式で画像が出力されるコンパクトカメラの場合にはそのカメラ自体の性能でその画質も決まってしまうわけですが、一眼レフタイプのデジタルカメラや一部のコンパクトカメラではイメージセンサからの情報をそのまま「生」の形で出力する「RAW形式」というものがあり、ここからPCなどで「現像」と呼ばれる処理により画像ファイルを生成することもできます。カメラに内蔵されている信号処理装置よりも一般のPCの方が圧倒的に処理能力は高く、またユーザが自由にパラメータを調整できるので、よりクオリティの高い画像を得ることができます。

現像にはカメラに付属のソフトウェアや市販の現像ソフト、PhotoShopなどの画像処理ソフトを使用することができますが、ここで最近アップデートされたらしいPixmantecのRawShooter Essentials 2006をご紹介します。RawShooterには有償版のPremiumもあるのですが、こちらのEssentialsは一部機能的制限はあるものの、試用版というようなレベルではなく十分実用に耐えるものになっています。

現像という処理はやはり少々面倒なものなのですが、RawShooterではファイルのブラウズも簡単にできるようになっているので、適当にファイルを選択してパラメータを変更し、出力ボタンを押せばJPEGかTIFFの画像ファイルを生成することができます。ちょっと独特な操作感覚のソフトになっていますが、しばらく使っていれば慣れることができるのではないでしょうか。生成される画像はややシャープ画像になる傾向があるようですが、それはパラメータの調整で好みに合わせることができるのではないでしょうか。もちろん国内外ほとんどのカメラのRAW形式に対応しているはずで、今回のアップデートでNikon D200やCanon EOS 5Dなどに対応したとのことです。

ということで、私はこれまで面倒なのと、RAW形式のファイルはサイズが大きく1枚のメディアで撮れる枚数が減ってしまうのが嫌でRAWはあまり使用してこなかったのですが、RawShooterで現像してみるとやはりカメラ本来の性能を引き出すにはRAWで保存しなければダメだということがわかりました。日々のスナップ程度であればJPEGでも問題はないと思いますが、これぞという1枚を撮るためにはRAWが必要なようです。PCのハードディスクも圧迫することにはなりますが、今後はRawShooterとともにRAWも活用していきたいと思います。まあ、その前にカメラの性能を引き出す能力の方が必要な気もしないではありませんが…

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