MOA美術館国宝と呼ばれるものにはやはり訳があるものです

建国記念日を含む先週末からの3連休、私は図々しくも後輩Mの家族のお邪魔をして一緒に国宝・重文めぐりの旅に行ってきました。M一家は今もまだその旅の途中で、私は休暇を取らなかったので一足先に夜行バスで帰ってきたのですが、それでも実に濃厚な充実した3日間で毎日朝から晩まで動き回っていました。この間にいろいろなものを見てきましたが、まずその初日に行ったのは熱海にあるMOA美術館というところです。

いつ行ってもモナコ公国のモンテカルロ市街地を思い出してしまうのは私だけではないと思いたいのですが、この熱海港を見下ろす斜面に建つMOA美術館というのは世界救世教の教祖である岡田茂吉氏の収集品を中心として展示している私立美術館ということですが、そのコレクションには3点の国宝も含まれており、今回はこのうちの1点、「紅白梅図屏風」が毎年2月のみ展示されているということで特に目当てとなっていました。ちょうどこの時期、熱海梅園では梅まつりが行われていてなかなかの賑わいになっていたのですが、この梅の季節に合わせての公開というのは少々粋なものを感じます。

また、現在は特別展として「乾山の芸術と光琳」という江戸時代の陶工尾形乾山とその兄である画家光琳の作品を中心とした展示が行われていて、全国各地の美術館の収蔵品が集められたこちらもなかなかの見物でした。オランダのデルフト陶器に触発されて青い彩色を施した作品が残されているなどはかなり意外でしたが、様々な試行錯誤が行われているのは興味深いものでした。

ところでお目当ての紅白梅図屏風も尾形光琳の代表的な作品です。2枚一組の金地の屏風に描かれているのはそれぞれ紅白の梅ですが、紅梅と白梅の描かれるバランスとその中央を流れる水流の配置は実に絶妙なもので、完全にイマジネーションの世界でこの構図が作られたのだとすれば非常な驚きを感じます。もし仮に実物が目前にあったとして、それを写真に撮るのだとしても同じような構図に切り出すのは並大抵のものではないと思いますが、それをこうして絵に描いてしまうというのはやはり普通のことではなく、国宝として讃えられる価値のあるものです。この屏風はそれ単独で展示室が与えられていましたが、この部屋で何分眺めていても飽きることなく惹きつける奥の深さを持ったものでした。

他にも数多くの重要文化財、重要美術品を収蔵しているこのMOA美術館ですが、こうしたコレクションがどういう金で買われたものなのかを考えるとちょっと複雑な気持ちになってしまいます。まあ、新興宗教というのもただ新しいというだけで、個人崇拝などでなければ古くからある宗教とそう大きく変わるものではないのかもしれませんが、教祖がこうして美術品を買い集めることができるだけの経済的余裕を持っているというのは…まあよくわからないので追求するつもりはありませんが。