Cloverfield“I had a good day.”

私の勤務先はいわゆるメーカーなので、賃金がそれほど良くない代わりに年に3度長期連休が確保されているのですが、このゴールデンウィークというのは子供達が大きくなると学校が休みではないので帰省や旅行の計画は立てづらく、何となく過ごしているうちに終わってしまうような気がしてちょっともったいないようなところがあります。そんなゴールデンウィークの最初の平日である今日は、妻に子供達をスイミングに連れて行ってもらっている間に一人で映画を観させてもらうことにしました。

今回のお目当ては以前から予告が気になって仕方のなかった「クローバーフィールド HAKAISHA」です。予告でも最初はタイトルさえ明らかにされていなかったり、情報が小出しになっていて凝った作りになっていたのですが、何といっても自由の女神が破壊されて飛んでくるシーンは衝撃的です。その後どういう展開になるのか、何が現れるのかについては一切明らかにされていなかったので、私もあえて予備知識を得ずに劇場へと向かうことにしました。もちろんここでもネタ晴らしをするつもりはありません。

この映画の特徴的なのは、この作品自体が「国防総省がかつてセントラルパークと呼ばれていた場所で発見した証拠品のビデオテープ、コード名”Cloverfield”」という仕立てになっているため、全編ハンディカメラで撮影された映像となっており、ナレーションやBGMなどは一切入っていない、ということです。また、映像は主人公のRobが恋人のBethとのデートを撮ったテープの上から重ね録りしてしまったということになっているのですが、ところどころに出てくる元の映像がリアリティの演出だけでなく色々な効果をもたらしています。

さらに、映像をよりリアルにするため、有名俳優は起用せず無名の新人や子役出身の俳優ばかりでキャスティングを行っているという拘りようで、知った顔が出ていると作り話にしか見えないものがかなり現実感を帯びたものになっているというのは確かです。しかしそうなると演技力の方が心配になってしまうものですが、さすがにハリウッドのオーディションをくぐり抜けてきた人たちですから、私が見ている限りでは全く問題ありませんでした。このあたりは層の厚さの違いを感じてしまうところです。

この作品は全体的に「いかにリアルにモンスターパニック映画を作るか」というところに力がつぎ込まれているので、ストーリーの方はそれほど凝ったものではありません。しかし逆にそれが現実的に感じられるところでもあり、あえてシンプルなものにしたのではないかとも思われます。また、一体何が襲ってきたのか、その後どうなったのかというようなことは全くわからないまま終わってしまい説明不足にも感じるかもしれませんが、説明的な部分が全くないというところがまたいいのではないかと私は思いました。

ということで、「映像は揺れるのに字幕は揺れないので…」などといっていた私もそんなことはすっかり忘れてしまい、かなり楽しむことができました。このリアリティはやはりただ者ではありません。私はどうも見落としたところがあるらしいということもあり、DVD化されたらもう一度観てみたいと思います。ハンディムービーの映像なら普通のテレビで観るとより現実感があったりするかもしれません。

なお、この手はもう一度使ってしまうと単なるパクリや二番煎じに見えてしまいそうなのに、実はこの作品の続編の予定もあるらしいのですが、それはやはり「もう1本の証拠テープ」という形で作られるのでしょうか。でもさすがにまた揺れる映像が売りでは飽きますから、当然何か違う仕掛けがあるのでしょうね…と私はちょっとだけ期待しておくことにします。