もっと近所にあったら通うのに…
私の住む街には今風のシネコンがありません。人口50万前後の中核市なので、あれば必ず繁盛するはずなのですが、中途半端に大きな街なので地元の圧力団体も力を持ってしまっているらしく、計画が浮上する度に潰されてしまうようです。つい最近も近所に予定されているショッピングセンターの計画にシネコンも含まれていたのですが、「青少年の健全な育成のため」などという訳のわからない理由で取りやめになってしまいました。地元の古い映画館のようにポルノを上映するわけではないのですから、全く理屈がわかりません。
駅前にもいくつかの映画館があるにはあって、しかも最新の作品を上映してはいるのですが、ホール自体の設計がどうにも古く座席の傾斜が緩すぎるので、前の席の人の頭が邪魔になり、またどこに座ってもスクリーンを見上げるようになり首が疲れるため、私は行く度に後悔してしまいます。娯楽の選択肢が限られていた時代とは違うのですから、観客を快適に楽しませる努力をしなければ客足は遠のくばかりだと思うのですが、シネコン新設に圧力を掛けて潰すなどという方向にばかり力を入れるとは実に嘆かわしく哀れなことです。
ということで、私は普段映画を観るときには25kmほど離れた隣町のシネコンまで30分ほど車を走らせて通っていて、それでも「どうしてそこまでしなければ..」とふと我に返ることがあるわけですが、昨日はさらにその上をいく、他の人から見たらばかげたことでしかないことをしてみました。昨日は勤務先の生産調整のために休業日となっていたのですが、ただ映画を観るために、しかも既に観た作品をもう一度観るために、100km以上離れたあるシネコンまで電車を乗り継ぎ2時間かけて出掛けてきたのです。
といってももちろんそれにはその場所でなければならない理由があります。全国で3カ所のみIMAXスクリーンで上映されている「トランスフォーマー・リベンジ」を観る、というよりはIMAXを体験するために、その3館のうちの1つである109シネマズ箕面に行ってきたのです。
IMAXシアター自体は日本にも以前から何カ所かあって、私も天保山のサントリーミュージアム内のIMAXシアターでノンフィクションの短編映画を観たことがありますが、それはIMAXシステム自体をあくまでアトラクションとして楽しむものでした。しかし今回はそのIMAXシステムで、IMAXのために特別に製作された最新ロードショー作品を観ることができるということなので話が違います。これはアメリカでは以前から存在していたものですが、日本ではつい最近になって109シネマズとIMAXとの提携により実現したもので、「トランスフォーマー・リベンジ」がその最初の作品となるのでした。しかしその「トランスフォーマー・リベンジ」が上映されているのは来週水曜日からの「ハリー・ポッターと謎のプリンス」が始まるまでなので、次男と一緒に吹き替え版を観たせいで欲求不満気味だったのを解消するチャンスでもあるということで急いで行ってきたのです。
IMAXシステムは巨大なスクリーンも特徴の一つと言えるのかと思いますが、109シネマズの場合は一般的なシネコンのホールが改装されたものであるため、その大きさは常識的な範囲内のものでした。しかし、従来のスクリーンの手前に設けられた、床に届くほどまで縦の長さがあるスクリーンはちょっと異様で期待がふくらむものでした。本編の上映前には通常CMや予告編がいくつかあるものですが、今回はそれとは違い、IMAXシステムの映像と音響のデモ的なものと、次回上映予定の「ハリー・ポッター」の予告があるだけでした。
またこの「ハリー・ポッター」の予告もIMAX専用のものであるらしく、宣伝文句や台詞の字幕さえも一切無く、ただひたすら高解像度のハリー・ポッターを見せつけるというものでしたが、私はこれだけでも鳥肌が立ちそうで、思わず「スゲェ」と一人呟いてしまいました。物凄く細かいところまで、通常潰れてしまうような暗いところもくっきりと描き出されていて、本物以上に「リアル」な映像がそこにあったのです。確かにIMAXの魅力を伝えるためには下手な宣伝文句は必要ないでしょう。
ということで本編の「トランスフォーマー・リベンジ」ですが、その内容は一度観てわかっているのでその分映像の細かいところに注意を払ってみることができて、かえって一度観ていたのが良かったかもしれません。映像はスクリーンが縦に広い分スクリーンの枠をあまり意識することが無く、映像の中に入り込むような感覚というのはあながち言いすぎではないかもしれません。ただ、この作品の場合はあえて実写にこだわって作られたものであるだけに、細部までCGで作り上げられた「ハリー・ポッター」のようなくっきり感はあまり感じられませんでした。もちろんトランスフォーマー達はCGのはずですが、実写部分との違和感を無くすためにあえてぼかしているということもあるでしょう。IMAXシステム自体の実力を知るためには「ハリー・ポッター」や「スター・ウォーズ」などCG満載の作品の方が相性がいいと言えるのかもしれません。
また、映像ばかりでなく、音響に関しても特別なものとなっていて、こちらの方は「トランスフォーマー」でも十分堪能できました。今では当たり前になっているDolby Digital Surroundよりも解像感の高いサラウンド効果で、作品との一体感の演出に大きな役割を果たしていることは間違いありません。
ということで、初めてのIMAX体験は映画好きにとっては時間と交通費を掛けて出掛けた甲斐があったと言えます。本当は昨日10日は109シネマズでは一般の作品が1000円で観られる日だったので、昨日公開の「ノウイング」も観るつもりだったのですが、バスの時間を読み違えて開演に間に合わず断念したのでした。しかもその一般作品が1000円の日にあえて2000円払ってIMAXで観るというのもバカバカしい感じがしないでもありませんでしたが…まあそんなことには代えがたい貴重な体験だったので良しとしてください。