This Is Itもう二度と会えないなんて信じられない。

彼の死がニュースとして悲しみと共に世界中を駆け巡ったのは未だ記憶に新しい今から4ヶ月前のことですが、私たちはまた彼に会うことができるようになりました。といってももちろんスクリーンでのことですが、まさに亡くなる直前まで心血を注いでいたロンドン公演”This Is It“のリハーサル時の映像を編集しドキュメンタリー映画にした「マイケル・ジャクソン This Is It」が今週から2週間限定で公開されているのです。もしも彼が健在であったならちょうど今頃は公演の中休みだったようですが、さすがにコンサートのためにロンドンに行くというほどのファンではないにしても彼の音楽には親しんできましたから、近所の映画館でそのステージを垣間見ることができるのなら、ということで私も早速観に行ってきました。本当は全世界同時公開初日の28日に観に行くつもりだったのですが、新型インフルエンザを押し切っていくわけにも行かなかったので仕方ありません。

ちょうど今日は毎月1日の映画の日だったということもあって劇場内は朝から混雑していましたが、この「This Is It」を観に来ている人は小学生からご年配まで幅広い年齢層で、特に目に付いたのは40~50代のMichaelの全盛期を共に過ごした人達でしょうか。皆私と同じように、あるいは私以上に彼の死を悼んだことでしょうが、この客層の広さはそのままMichaelの音楽がいかに多くの人々に受け入れられてきたかを示すものです。

ということで、上映が始まり、冒頭の”Wanna Be Startin’ Somethin’“でのムーンウォークを観てから私はすっかりスクリーン上のMichaelの虜になっていたわけですが、それは他の人々も同じだったようで、スタッフロールが全て終わり場内の照明が明るくなるまで、誰一人として席を立とうとしませんでした。私がこれまで色々な映画を観てきた中でも、こんなことは初めてです。もちろんエンディング曲も全てMichaelのヒット曲なのですから、Michael見たさに集まった人達が全て聴いて帰るのも当然、とも言えるかもしれませんが、私にはそれだけのことのようには思えませんでした。

この映画を通して、Michaelがいかに純粋に音楽を愛し、観客を楽しませようとしてステージを作り上げようとしていたかがはっきりと伝わってきます。それはこのステージが彼の久しぶりの、おそらく最後になると思われるものだったからというだけではなく、これまでの全てのパフォーマンスにおいて同様だったのではないでしょうか。また彼が自分が生まれた地球という星を愛し、地球環境へのメッセージを送り続けていたことも強調されていましたが、それが全く嫌味に感じられないところもMichaelの凄さではないでしょうか。

映画の中でスタッフから”The Man”という呼ばれ方もする、彼ほどの成功者が、全く驕りを感じさせず熱心にリハーサルに励む姿にも心を打たれますが、このステージのために世界中から集まったミュージシャン、ダンサーも難関のオーディションを勝ち抜いてきた一流メンバーですから、彼らのテクニックと息のあったパフォーマンスもかなりの見応えがあります。しかしリハーサルでこのレベルなのですから、本番ではいったいどれほどのものを観ることができるはずだったのか、今では想像するしかないというのも残念なことです。

作品の中で私が特に印象的に感じたのは、Michaelがスタッフを褒めるときに”God bless you.”という言葉を頻繁に使っていたことと、彼がステージでの音楽に対し「最初のレコーディングのときの音」を大切にして忠実に再現させようとしていたことです。観客が持っているイメージ通りの音楽を奏でることで一体感を高めようということなのでしょう。

この作品ではリハーサル映像そのものの他、ステージでバックに使われるはずだった映像なども使われていますが、ステージのために作られた3D版”Thriller“や”Smooth Criminal“などは映画館のスクリーンでの上映にも耐える、かなり手の込んだものになっています。これだけの準備をして公演までわずか半月あまりに迫っていたところで、たった一人の医師の手によりMichaelの命と共に全てが無に帰してしまうとは、誰も想像もしなかった悲劇でしょう。スタッフ側にしてもいよいよこれからというところでの喪失感は計り知れないものがあるかと思いますが、それもこうして映画になって多くの人々の目に触れることができればある程度は報われるかもしれません。

ということで、私にはかなりグッと来るものがありましたので、Blu-ray版が発売され次第購入することに決めました。しかし、それにしても、やはり、彼が既に過去の人であるということは受け入れがたいものです。何といっても悔やまれるのは彼の早すぎる死だけではなく、本来なら彼が自身のパフォーマンスに一層磨きを掛けることができたであろう時期を周囲の陥れられ失ってしまったことです。時計の針を巻き戻すことができたなら…私がそう思うことはそれほど多くありませんが、彼についてはそう思わずにはいられません。

マイケル・ジャクソン THIS IS IT(1枚組通常盤)
アーティスト:マイケル・ジャクソン
SMJ (2009/10/28)
ISBN/ASIN:B002MHA3TM


[18:25 追記]
さらに2週間の上映期間延長が決定したそうです。私ももう一回観に行けるかもしれません。