District 9エビちゃんがいっぱい。

日本代表の戦いぶりが不甲斐ないからかどうかはわかりませんが、今年はサッカーのFIFAワールドカップ開催の年だというのにどうも盛りあがりに欠けるような気がします。最近の試合を見ても緊張感が感じられませんし、このままではリーグ戦突破なんて夢のまた夢、よくも地区予選を勝ち抜いたものだとさえ思えてきます。まあ、オランダデンマークカメルーンが相手ですから、1勝でも上げれば御の字かもしれません。

また、そのワールドカップの開催地が日本から遠く離れた南アフリカ共和国ということが盛り上がらない一因であるのも間違いないでしょう。単に遠いというだけでなく、その治安の悪さは外務省のお墨付きです。

銃器を用いた犯罪が多発しているため、同国滞在中に武装強盗に遭遇する可能性がある

と言われてしまうと普通の人は二の足を踏むどころでは済まないでしょう。本当にワールドカップは成功するのでしょうか。

それはさておき、その南アフリカ最大の都市であるヨハネスブルグを舞台とした映画「第9地区」が評判を呼んでいるようだったので私も観てみたのですが、なかなかのハードSFでした。

ヨハネスブルグ上空に飛来してそのまま動けなくなった宇宙船から、多数の異星人を難民として地上の居住区に住まわせて28年が経った頃、主人公Wikus van de Merweは市内にあるスラム化した居住区である「第9地区」から郊外の居住区に異星人たちを移送するプロジェクトの責任者となったのですが、異星人の住居内で見つけた謎の液体を顔面に噴射してしまったことから…というような感じです。
Prawn
私が南アフリカと聞いて真っ先に思い浮かべてしまうのは人種隔離政策アパルトヘイトのことですが、この作品でもそれは強く意識しているに違いありません。登場する異星人は高度な文明を持っているのは間違いないにも関わらず、その容姿からエビ(prawn)と呼ばれて地球人に蔑まれ、地球人の社会からは隔離されており、ゴミの山から食料を漁る惨めな生活を強いられています。それでも宇宙船が動かない以上、地球人の世話になって生活していかざるを得ないということで虐待に甘んじているようです。

しかしこの異星人の持つ兵器が物凄いものです。異星人のDNAに反応して作動するということで地球人にはどうしても扱うことができないものなのですが、恐るべき破壊力を持つため、それをなんとか我が物にしたいという者が出てくるのは自然な流れです。後半では実際にこれらの兵器が使われることになるのですが、地球人を選択的に攻撃したり、携帯兵器とは思えない爆発的な威力を持っていたりと、映像的なインパクトも大きなものです。なお、この作品はPG-12のレーティングであるため、撃たれた人間は木っ端微塵に肉片と化してしまいます。

出演者のほとんどが無名の俳優であったり、ハリウッドのCGを多用した作品としては製作費がかなり低く抑えられているということなのですが、やはり映画の面白さは金をかければいいというものではないということを再認識します。かなりグロテスクなシーンも有り、終わり方も綺麗ではなく終わった後の爽快感はありません。またSFとしてのテクノロジー的な整合性も甘いところがあるような気もしますが、代わりに社会性を持たせて焦点をずらしているのかもしれません。しかし、大衆に迎合した大作とは違う何かが感じられて、ちょっといいものを観たという気になる、そんな作品だったように思います。

ちなみに本作の大ヒットを受けて続編の製作にも入っているそうですが、ちょっと下手なものは作ってもらいたくありませんね。