Tron: LegacyCGも大きく進化しました。

今では「使っていない」という方が話題になるほど当たり前の技術になってしまった映画におけるコンピュータグラフィックス技術ですが、それを本格的に利用した最初の映画といえば今から28年前、1982年の「トロン」です。この時私はまだ小学生だったこともあってロードショーでは見逃しているのですが、それからしばらく経って二子玉川にあった二子東急に一人で観に行ったのを覚えています。とは言いながら、当時すでにフィルムがかなり傷んでいたこともあってうら寂しい感じだったのは記憶にあるものの、映画の内容についてはさっぱり覚えていません。

しかし、やはりなんといってもCG映画の先駆けとなった一つの金字塔ですから、SF映画好きとしてはなんとなく思い入れのようなものがありますので、28年ぶりに続編が公開されるとあっては放っておけません。ということで公開初日の昨日、「トロン:レガシー」を早速観てきたのでした。

「トロン」の時にはいかにもCGという映像だったわけですが、現代の技術ではすでに実写を越えるリアリティで描くことができるようになっています。しかしそれでも舞台となっているのはコンピュータの中という非現実的な世界の設定ですので、あえて現実を越える映像を作り出しています。主人公のSam Flynnがコンピュータの中の世界「グリッド」に入った途端、鮮やかな蛍光色で縁どられた漆黒の世界がスクリーンに描き出され、思わず息を飲みます。

やはり「トロン」といえば何と言ってもライトサイクルです。今作でもライトサイクルによるバトルシーンが登場しますが、立体的なステージでのバトルがかっこいいのなんの。今回のライトサイクルは現れ方からして格好良く、私の想像を超えていました。他に登場する数々の乗り物のいずれも素晴らしく、もっとじっくり観てみたいというものばかりでした。
Quorra
しかし、残念ながらこの映画はその映像や世界観を楽しむもので、ストーリーの方は単調と言われても仕方が無いかもしれません。SF大好きな私は退屈するということはありませんでしたが、高齢の方や女性にはやはり辛いでしょうね。基本的に男の子のものでしょう。今回もレイトショーで観てきたのですが、かつてなく中年男性の姿が多かったのも納得できます。

今回、主人公の父Kevin Flynnとそのかつての盟友Alan Bradleyの役はそれぞれJeff BridgesBruce Boxleitnerという「トロン」の時と同じ俳優が同じ役で演じています。若かりし頃のシーンは「ベンジャミン・バトン 数奇な人生」と同じ技術が使われ、本人の若い時の顔を合成して実現しているとのことで、まさに最先端のCG技術が活用されているわけです。また、ヒロインのQuorra役はOlivia Wildeが演じていますが、黒いショートヘアのエキゾチックな美しさにはグッと来るものがあります。「お前は髪が短かければ誰でもいいのではないか」と言われると認めざるを得ないような気もしてしまいますが…

ということで、期待していた通りとにかくかっこいい映像に満足してきました。Daft Punkによるサウンドトラックも世界観にピッタリ合っていて文句なくかっこいいです。しかし、この作品も3D版として公開されているものを観てきたのですが、必ずしも3Dでなくてもいいような気がしました。現実世界の映像は3Dではないようでしたし、グリッドの中に入ってからの映像も2Dでも十分満足できるような気がします。最近何でもかんでも3Dで作ればいいと思われているようなフシがありますが、料金の差額に見合う満足度を与えられなければダメですよね。3Dだと光量が半分になってしまうのと偏光レンズなどを通すことで映像の明瞭度が落ちてしまうという欠点もありますし、今後他の作品でも2D版も選べるのであれば良く考えて選ぶようにしたいものです。

トロン:レガシー オリジナル・サウンドトラック
演奏:ダフト・パンク
WALT DISNEY RECORDS (2010/12/15)
ISBN/ASIN:B0045LNIIQ