こういう映画を作れる余裕が凄い。
ちょっと気になる、という程度の映画が日本では上映館が限られていて観ることができなかったり、DVDのレンタルも地元のTSUTAYAでは扱われなかったりすると、余計に観たくなってしまって是が非にでも観なければという気になってしまうものではないでしょうか。私にはそういう作品がいくつかあるのですが、今回観た「その男ヴァン・ダム」というのもそんな中の一つでした。ちょっと離れたTSUTAYAにあることは分かっていたので、レンタル状況を見て空いているときに借りに行かないといけないかな…などと思っていたのですが、先日ふとテレビの番組表を見ていると、その翌日にBS朝日で放映されることになっているではないですか。何という神の思し召し…とまでは言いませんが、これは観なければならないということで録画して、早速今日観てみました。
どうしてそんなにこの映画が気になったのかというと、タイトルにもなっている「元」アクションスターJean-Claude Van Dammeが本人役で主演していて、その自分の落ちぶれっぷりをネタにして自虐的に演じているというものだからです。ハリウッドで数々のヒット作で主演したスターがそんな役を引き受けているだなんて、それだけでも観たいと思わせるには十分ではないでしょうか。
この作品の中で主人公JCVDにとってかつての栄光は過去のものとなり、また娘の養育権をめぐって妻と争う哀れな中年となってしまっています。一方そんな彼も地元ブリュッセルに戻ればヒーローであり、人々はみな彼をスターと認め敬っています。そうした状況でJCVDが貯金を引き出そうと郵便局に寄ったところ事件に巻き込まれるのですが、どうにも奇妙な展開となってしまうのでした。
実はこの映画、私が勝手に予想していたのとはちょっと違い、地味ながらなかなか凝ったものになっていて味わい深いものがありました。ひとつの出来事をいくつかの視点から繰り返し描写することで物事が徐々に分かってくるような仕掛けが特に面白いところです。モノトーンでまとめられた落ち着いた映像でもあり、派手さは一切ないもののこういう映画もたまにはいいな、と思わせるものでした。
しかしこの作品、舞台がベルギーに移ってからは台詞がほとんどフランス語で、完全に字幕が頼りになってしまいます。もちろんそれでもストーリーは判るのですが、細かいニュアンスを知るにはやはり原語がわからないと辛いですね。私も字幕がなくてもいいというほど英語ができるわけではありませんが、たまにおやっと思ったりなるほどと感心したりすることがありますから、そういうものが少しもないというのはちょっと寂しい気がしました。まあだからといってフランス語も勉強しよう、という気には全くならないわけですが…