The Adjustment Bureauあえて細かい説明をしないところがいいのかも。

一口に「映画好き」といってもやっぱり人それぞれ好みのジャンルというものがあるもので、私の場合はSFとファンタジーというのがそれにあたります。もちろん他のジャンルでもいい作品、面白い作品はあるので、その好みに囚われずできるだけいろいろなジャンルのものを観ようとはしていますが、それでも何気なく選ぶのはやはり好みのものということになります。しかし、たとえ好みのジャンルであっても駄作というのはあるもので、ハズレを引いてしまうと心底ガッカリしてしまいますが、最近はインターネットでも色々情報が入ってくるようになったことで、マスコミを通じた情報はほとんどあてにならないということも判ってきました。結局、マスコミがいかに面白そうに報じるかというのは、どれだけ宣伝費をつぎ込んだかでしか無いというわけです。全然マスメディアに乗ってこない作品が観てみると結構面白かったり、その逆も然りです。

それはともかく、SFに関して言うとあまり外れがないのではないかと思うのがPhilip K. Dick原作の映画化作品です。Philip K. Dickというと真っ先に思い浮かぶのが「ブレードランナー」ですが、この作品は「電気羊はアンドロイドの夢を見るか?」という長編作品を原作としたものです。彼は他にも数多くの長編作品と短編集を残しており、この短編集の中からアイデアをふくらませて映画化されたものも少なくありません。今回はその中の一つ、「調整班」(Adjustment Team)という短編を元にした「アジャストメント」という映画を観てみました。

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Matt Damon演じるDavid Norrisはニューヨークを地盤に上院選に出馬している若手政治家です。そのDavidがなぜか男子トイレで出会うことになってしまうEmily Bluntが演じるEliseと強く惹かれあい、その後偶然バスで乗り合わせ、さらに思いを強くします。しかしその直後、不思議な行動を取る謎の集団に拉致され、Eliseに二度と会わないよう厳命され、せっかく貰った電話番号のメモも焼き捨てられてしまうのですが、それでも忘れられないDavidは3年間同じバスに乗り続け、その執念で再会を果たすのですが…というようなストーリーです。

元が短編小説なのであまり細かいプロットはなかったのではないかと思うのですが、それをふくらませて一本の映画にしてしまうというのは脚本家の仕事も大したものですね。全体的に曖昧なまま残しているところが多く、上でも「謎の集団」としていますが、結局これは最後まで謎のまま残ってしまいます。これは観たあとでちょっとすっきりしない後味を残すものの、あえて明かさない事で深みとしているような気がします。この謎は原作者のみが知るということでしょうか。あるいはそこまで考えてはいないのかもしれません。

Mattが政治家というのもなんだか似合わない感じがするのですが、史上最年少で下院議員に当選ということになっていますし、政治家らしいシーンといえば選挙活動中の演説の場面くらいなのであまり政治家であるということは意識する必要はなさそうです。一方、Emilyの方はどことなく謎めいた感じの女性に感じられて、彼女も裏に何かあるのではないかと勘ぐってしまったくらいです。しかしEmilyも今の時点で28歳、撮影の頃は26歳くらいだったでしょうが、もっと落ち着いた大人の女性に見えてしまいました。日本人は海外では若く見られるものですが、こちらからしてみれば白人の年齢というのはわからないものです。

ということで、やはりDick作品には独特の味があってやっぱり私は好きですね。派手さは全く無いので一般受けはしないのかもしれませんが、時代が変わっても陳腐化してしまうこともないのではないでしょうか。まだまだたくさん残っているDick作品が今後どのように映画化されていくのか、また楽しみにしていたいと思います。