前後編くらいが良かったような。
映画「ロード・オブ・ザ・リング」から始まった、Peter Jackson監督によるJ. R. R. Tolkien原作ファンタジーの映画化も「ホビット 決戦のゆくえ」でようやく終りを迎えることができました。ロード・オブ・ザ・リングシリーズの原作「指輪物語」とホビットシリーズの原作「ホビットの冒険」とは元々別の作品ですが、世界観や設定の多くを共有した一体感のあるものとなっています。しかしながら、「ホビットの冒険」はもともと児童文学として書かれたものであるのに対し、「指輪物語」はそれを元に構想を大きく膨らませて書かれた長大な作品となっており、小説としての趣は大きく異なるものになっています。このため、「ホビットの冒険」は大人であれば一日で読み切ることも苦ではありませんが、「指輪物語」についてはそもそも完読すること自体がなかなか手ごわいかもしれません。
しかしそんな2つの作品が映画化にあたってはそれぞれ三部作として製作されました。となると無理があるのは仕方がなく、ロード・オブ・ザ・リングの方は詰め込み過ぎで端折られてしまった部分も多く、一方ホビットの方は原作にはないエピソードや登場しない人物を創作したりしてストーリーが膨らませられ、映画オリジナルの部分が多くなっています。とはいえ、Tolkienの世界観は大変尊重されているので、それをぶち壊して台無しにしてしまうようなことがないのは大いに評価できるのではないでしょうか。
ということで、この完結編である「ホビット 決戦のゆくえ」が日本では先週末から、アメリカではちょっと遅れて今週水曜日から公開されたので、たまたま早く仕事の終わった2日目の木曜日に観に行ってきました。私がいつも行くのは20スクリーンある近所のシネコンなのですが、今回の上映は通常版、RealD 3D版、IMAX 3D版、そしてRealD 3D HFR版といろいろ選ぶことができました。とはいえ結局観たのは上映時刻の都合で通常の2D版ですが、通常と言ってもデジタル上映ですし、乱視の影響か裸眼視力が左右で違って片目で見ていることが多いからか3Dはどうも苦手なので、これは特に問題ありません。
前作「ホビット 竜に奪われた王国」の時にも「今回も最初はどんな話だったか思い出すのに時間がかかってしまいました」などと言っていましたが、今回もいきなり村がスマウグに襲われるところから始まって、いったいどんな話だったかとしばらく時間が必要でした。Blu-rayなどで予習をしておくべきなのかもしれませんが、このシリーズは三部作揃ってセットで買えるようになるまで待とうと思っているのでまだ持っていないので仕方なく、逆に揃ってから一気に見たらまた楽しめて良いかもしれません。
その後は英語版タイトル通りの5軍入り乱れての戦いと、その中で描かれる家族愛、エルフとドワーフの道ならぬ恋、そして財宝に目がくらんだ王が覚醒するまでといったドラマが並行します。大軍どうしの戦闘シーンはロード・オブ・ザ・リング以来のCGによるもので壮観ではあるのですが、もう慣れてしまって感動することも無くなってしまいました。製作側としてもそれが見せ場とは思っていないのか、それほど長い時間が割り当てられていることもありません。むしろ入り組んだ路地での個人戦の方が迫力のあるものになっているように感じました。
エルフやドワーフ、オークは人間ではないので人間離れした動きをしてもおかしくはないのですが、Legolasの崩れ落ちる岩を伝って駆け上るというシーンはさすがに無理がないでしょうか。劇場でも笑い声が上がっていましたが、まあむしろそれを狙ってやっているのかもしれません。もう一つ、本当は親子である闇の森のエルフの王であるThranduilとLegolasとの関係が観ていてよく分からなくなってしまったのですが、エルフが年を取らないとはいえ演じている俳優の年齢が逆転してしまっているので、ロード・オブ・ザ・リングとの連続性もあるので仕方がないことではありますがなかなか厳しいものがありました。
最後まで観て感じたのは、本当にこれは三部作である必要があったのかということです。振り返ってみるとあまり内容がなく、なんとなくダラダラした感じになってしまっていました。上映時間145分というのも無理やり伸ばしたような感じで、もうちょっとすっきりとしたストーリーにして二部作くらいにしておいた方が締まって良かったのではないかなあというのが率直な感想です。まあ前作の内容をほとんど覚えていない私が言うのもなんなのですが…