Interstellar - Cooper and Brand2001年宇宙の旅」にどこか似ている?

宇宙旅行ものというのはSF作品の一つの王道ですが、CGが発達して映像としては比較的簡単に作れるようにはなったものの、できてしまうがゆえに素人が見てもいくら何でもそれはないだろうというようなでたらめな作品も少なくありません。主題は別にあってあくまでお話を膨らませるためのものだから、と割り切ることができるようなものであればいいですが、そうでない場合には見ていて悲しくなってしまうこともあります。

しかしその点、Kip Thorneの監修も得て科学的に確かな背景を持つという触れ込みの「インターステラー」なら安心して観ることができるだろうと、日本でも公開されて評判が聞こえてきたので私も観てみることにしました。私は他の作品を見た時に予告で最初にこの作品を知りましたが、多くが語られなかったのでいったいどういうストーリーなのかもわからず、あまり前情報のない状態で観ましたが久しぶりに骨太のSF作品を観たような気がしました。

近未来の地球では農作物が病気でどんどん育たなくなってしまい、慢性的な食料不足の状況が続いていました。世間ではもはや技術者は必要とされておらず、子供たちも農業に従事することが求められていました。主人公のCooperも元NASAのパイロットですが、宇宙開発も既に公には行われておらず、Cooperも農業に就き、自身の技術を自動化した農場に活かしている、というところから始まりますが、ここから宇宙旅行にどうつながるのかはなかなかわかりませんでした。しかし、冗長になってしまいそうなところはすっぱり省略し、宇宙に出たところからが本当の物語です。

この作品の鍵となっているのは巨大な重力場の影響による時間の歪みです。土星の近くに発見されたワームホールを通り抜けて別の銀河へ行った主人公らは、ブラックホールの近くにあってその影響を受けている惑星へと降り立ちますが、そこではその惑星上の1時間が地球上の7年間にも相当するほど、時間の流れが早くなっています。この影響によって物語は非常に複雑なものとなり、様々な感情面での作用も生まれることになるというわけです。
Interstellar - Murph
しかし、いいSF作品というのはその科学的要素を持つ設定を物語のスパイスとするだけで、主題となるのは人間ドラマです。この作品でもテーマとなっているのは父と子の愛であり、それは最初から最後まで一貫しています。SF的な設定そのものに力が入りすぎてしまうとドラマ面が疎かになって薄っぺらなものになってしまいがちですが、そういうことには陥っておらず、見応えのあるものになっています。

また面白かったのは宇宙旅行のアシスタントとなるロボットたちです。TARSやCASEという名を持つ彼らは同じ大きさの直方体をいくつか並べたような形をしていますが、状況に応じて複雑に変形し動きます。また、人工知能を持ち会話をすることができますが、妙に生々しく人間的な音声を持ち、さらにユーモア度や正直度を可変パラメータとして持ち変更できるという設定も面白いところです。あえてヒューマノイド型をしていないところがいいのではないでしょうか。

この他、各俳優陣の演技もなかなかですし、宇宙の映像も素晴らしく、見どころは盛り沢山です。Anne Hathawayも綺麗だし、Mackenzie Foyも娘に欲しいくらい可愛いです。終盤はSF好きな人でないとやや難解かもしれませんが、あまり深く考えずに楽しんだらいいのではないでしょうか。