Atomic Blonde - Charlize Theron as Lorraine Broughton映像も音楽も何もかも。

いわゆる東西陣営のいがみ合いにより国家が2つに分断されている、と言うと今では南北朝鮮を思い浮かべるかと思いますが、かつては東西に分断されていたドイツがその代表でした。さらにドイツがややこしいのは分断前の首都だったベルリンは当時の東ドイツ領内にありながら、ベルリン自体も西に分けられ分割統治されていたということで、東側からの人口流出を食い止めるためにその境界に東ドイツが築いたのがベルリンの壁です。

このベルリンの壁は1961年から1989年に崩壊するまでの30年弱に渡って東西の行き来を阻んでいたわけですが、ちょうど今北朝鮮からの「脱北」が命懸けで行われているように、当時の東から西への脱出は逮捕、射殺、落下、溺死の危険を伴ったもので、運のいい一部の人だけが逃れることができたのでした。私はまだベルリンに行ったことはありませんが、当時イギリスに住んでいたことがあり、(西)ドイツも何度か訪れていたため、比較的肌に近いところでこの緊張感に触れていたものです。そしてこの壁が崩壊した1989年、日本でこのニュースを聞いた時には鳥肌の立つ思いだったことを今でも覚えています。

ということで前置きが長くなりましたが、公開初日の昨日観た映画「アトミック・ブロンド」はこの事件の直前のベルリンを舞台とした映画です。といっても壁の崩壊そのものとは直接関係なく、冷戦下のベルリンで暗躍する東西のスパイの戦いを描いたフィクションで、Antony JohnstonSam HartによるThe Coldest Cityというグラフィックノベルを原作としたものです。

The Coldest City
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Antony Johnston
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主役はMI6のエリートエージェントであるLorraine Broughtonですが、それを演じているのはCharlize Theronで、このLorraineが美しくカッコよく、最高にクールです。本作のレーティングは日本ではR15となっている通り、血しぶき飛ぶバイオレンスだけでなくちょっとエロティックなシーンもありますが、そうでないシーンでもかなりセクシーです。

そして本作が素晴らしかったのはストーリー、キャスト、アクションだけではなく、時代背景とそれに合わせた音楽もです。BGMにはこの80年代後半に流行っていたヨーロッパの音楽が使われていて、当時よく聴いていた私はノリノリで観ることができました。99 LuftballonsCities in DustThe Politics of DancingFather FigureUnder Pressureなど、とても懐かしい曲もあったので、帰宅後迷わずサウンドトラックを購入してしまいました。

Ost: Atomic Blonde
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ところで少々ネタバレになりますが、本人がカメオ出演している「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー: リミックス」その他、最近David Hasselhoffの名前を耳にする機会が多いような気がするのですが、何なのでしょうか。実はベルリンの壁崩壊にまつわるエピソードがあるなんていうことを私は知りませんでしたが、そんな小ネタまで仕込まれています。

ということでこの映画を観て、北朝鮮も突然崩壊して一気に統一が果たされる、ということになるかもしれないし、あるいは韓国の方がということも無いとは言えないかもしれない、なんてことを考えてしまいました。当時もドイツがいつまであの体制かなんていうことはわかりませんでしたし、どうしたら冷戦が終わるのかなんていうことは実際にそうなってみるまでわかりませんでしたからね。