撤退の成功も勝利のうち。
戦争映画というのは私の得意なジャンルではありませんが、昨日は評判の高かった「ダンケルク」を公開初日の朝一番の回で観てきました。
この作品は第二次世界大戦初期の1940年にフランスのダンケルクに追いつめられ、ダイナモ作戦により脱出を図る英仏連合軍とドイツ軍によるダンケルクの戦いを描いたものですが、私はまったく予備知識を持たずに観に行ったにも関わらず特に問題なく理解し、楽しむことができました。本来、学校で真面目に世界史を勉強していれば知っているはずの有名な出来事なのでしょうが、私は暗記ばかりを求められる日本の社会科の授業というのが苦手だったので、歴史にも非常に疎いところがあります。今になってまったく違う形で歴史を学ぶととても面白いので、学校でも生徒が興味を持てるような教え方をすればどれだけ良いかと常に思っているところです。
さて、話題が逸れてしまいましたが、この作品ではその物語をイギリス側の立場で、陸の突堤・海上・空それぞれにいる人々を第一人称にして描いており、陸海空の場面は並行してそれぞれの物語で進行していき、最後には一つに結びつくという形です。一方、ドイツ側は最後に一瞬出てくるだけでそれまでは画面に一切入ってきませんが、得体のしれない無機質なものとすることで敵方にあまり意識を向けさせず、登場人物らと感情を共有できるようになっているように思います。
陸の主人公はTommyという名の若い二等兵で、Fionn Whiteheadという無名の若者が演じていますが、これはChristopher Nolan監督の意向とのことです。途中からTommyと行動を共にすることとなるAlexという二等兵の役でOne DirectionのHarry Stylesが出演しているのももっと話題になっても良いように思いますが、起用を決めた時に監督はHarryが有名な歌手であることを知らなかったとのことなので、そういう売り出し方も望まないでしょう。また一方、海のMark Rylance、空のTom Hardyなど、その他の俳優陣はしっかりと経験のある人達を起用しており、演技はしっかり重厚感のあるものとなっています。
この作品はIMAXカメラで撮影されたとのことなので、できればIMAX上映で観たかったのですが、自宅近くにはIMAXシアターがないので私が観たのは通常の2D版です。しかしそれでもCGに頼らず実際の軍艦や航空機を使用して撮られた映像のリアリティはしっかりと伝わってきました。IMAX上映であればそれ以上のものが得られたのかもしれないと思うと、改めて体験してみたくもなってきます。「凄いCG」がもてはやされていた時代から「使っていないこと」が売りになる時代になるのも案外早かったですね。
史実として、およそ40万人ほどの兵力のうち36万人もが脱出に成功したということですが、撤退と言うと敗走のイメージが強く感じられてしまうものです。しかしこの作戦の成功により、重装備をすべて置いていくことになったとしてもそれは資金を調達すればなんとかなるもので、貴重な人的資源を守ることができたというのは大いなる成功であったとというのは私も認識を改めたところです。もしもこの撤退がうまく行っていなかったなら、第二次世界大戦の行方もまったく違うものになっていたかもしれないのです。