佐藤琢磨の2戦ぶり復帰初戦となったヨーロッパGPが、ドイツのニュルブルクリンクで開催されました。一時期、高性能スポーツカーなどのが「ニュルブルクリンクでテストした」などと自慢気に謳っていたこのサーキットはアップダウンが激しく、トリッキーなコーナーが多いということで車にキツいということです。また日曜日は24℃だったそうですが、この週は気温が30℃ほどにまで上がったということで例年になく暑い中、そんなサーキットで行なわれたこのグランプリはまさに波乱に満ちたものとなりました。

今回から予選が土曜日の一回のみとなり、まさに一発勝負となったことで、これまでの2回のタイムを合算していた時よりも番狂わせが起こりやすくなったのではないでしょうか。結果的にはウィリアムズのハイドフェルドが初のポールポジションを獲得し、ライコネン、ウェーバー、トゥルーリが続くということになり、実力とそうは違わない結果になったようですが、やはりフェラーリの2台は上位に食い込むことができず、またBARは5週間前のエンジンをそのまま使わなければいけないということと、最初に予選走行しなければならないという不利な条件から後方に沈むこととなってしまいました。

決勝ではフォーメーションラップ後にフィジケラがスタートできないというトラブルに見舞われ、フォーメーションラップをやり直すという出来事がありましたが、これが今GPの展開を暗示するものだったのかもしれません。スタート仕切り直し後の最初のコーナーでのウェーバーとモントーヤの接触を発端とするクラッシュが最初の波乱となりました。これによって、3位スタートという好ポジションにいたはずのウェーバーはわずか100mほどの走行であっという間にリタイヤを喫することとなってしまいました。また琢磨とラルフもフロントウィングを破損してしまい、緊急ピットストップで出遅れることになってしまいました。

オープニングラップでは結局ライコネンがトップで帰ってくることになり、このままライコネンの独走か、と思われました。また、トゥルーリは3位で周回していたのですが、フォーメーションラップ開始15秒前までにメカニックがマシンを離れなければならないというルールに違反したということで、トゥルーリにはドライブスルーペナルティが課せられてしまうことになり、せっかくいいポジションにいたにも関わらず大きく順位を落とすことになってしまい、本当に残念でした。その後レース中盤では5位という好ポジションにいたクルサードがピットレーンの速度制限違反によりドライブスルーペナルティを課せられてしまうということもありました。

終盤にさしかかるにつれ、タイヤが厳しくなってきたのかコースアウトする車が増え、2位を走行するアロンソやトップ快走中のライコネンもその例外ではありませんでした。ラスト10周ほどはテレビ画面で見ていてもわかるほどライコネンの右フロントタイヤは痛み、激しく振動していましたが、それを必死に抑えながらということになりました。2位から追い上げるアロンソのタイヤもかなり辛い状況でしたが、それでもジリジリとライコネンの背後に迫り、ファイナルラップを迎える時には1.5秒差に付けていました。

ライコネンのマシンを悲劇が襲ったのはその直後、あと一周走れば優勝という時でした。激しい振動に耐えられなくなったのはドライバーではなくマシンのサスペンションだったようで、サスペンションアームが折れてしまいあえなくリタイヤということになってしまいました。

結局そのままアロンソがトップでチェッカーフラグを受け、ハイドフェルド、バリチェロと続き、クルサードは4位に終わりましたが、地味ながら着実にポイントを稼いでいます。今GPで復帰のBARはライコネンを挟み10位バトン、12位佐藤琢磨という結果でしたが、無事に完走を果たし、次戦に繋げられる結果を残すことができました。しかし、アロンソが10ポイント獲得したのに対しライコネンは0ポイントに終わってしまい、大きく水を開けられることになってしまったのはライコネンにとっては非常に悔しいことでしょう。逆にアロンソにとってはチャンピオンシップを手にすることが徐々に確実なものとなってきました。

こうして見ると実に波乱に満ちたGPだったことがわかりますが、本当に最後の最後まで目が離せないのが今年の新レギュレーションです。タイヤ交換禁止というのがこれほどレースに変化を与えてくれるものだとは思いませんでしたが、F1を実に面白いものにしてくれました。しかし、FIAはエンジンやタイヤのワンメイク化を進めようとしているようですが、F1の面白さはドライバー個人の実力だけではなく、マシンやチームの各種要素が複雑に絡みあって結果を導いているというところにもあると思うので、それだけはぜひとも避けてもらいたいと思います。

関連投稿