Photoshopタイプのビットマップグラフィックスの編集ソフトウェアとしては専門の書籍も何種類も発行されてGIMPがある一定の地位を確保するようになったのではないかと思いますが、これまでIllustratorタイプのベクタグラフィックスの編集にはなかなかこれといったものが無かったように思います。OpenOffice.orgのDrawなどでもある程度のことはできますが、機能的にはグラフィックスよりは説明図のようなものに向いているのではないかと思います。

そんなところで私が最近知ったInkscapeはかなりキているのではないでしょうか。同種のベクタグラフィクスソフトであるSodipodiプロジェクトからフォークしたものだそうですが、かなり不安定なバージョンのまま開発が止まってしまっているように見えるSodipodiから見ると、かなり洗練されているのではないかと思います。Office Suiteライクな外観を持っていますが、操作性はまずまずですし、動作はかなり安定していて私がちょこちょこ使ってみた限りで異常終了してしまったのは壊れたJPGファイルを読ませようとした時くらいです。

絵心のない私にとってかなり便利なのがビットマップ画像のトレース機能です。色や明るさなど各種の閾値により、任意の段階のベクタ画像に分解することができるものです。写真などのアナログ(?)画像をトレースすればイラストっぽい画像を作り出すことができてしまいますし、イラストやロゴなどのデジタルな画像をトレースするとかなりの精度で狙った通りのベクタ(パス)を得ることができます。

また、作成した画像はSVG(XML)のファイルとして保存されるのですが、ベクタデータならではの圧縮効率で非常にコンパクトなサイズに収まってしまいます。数MBものスキャナ画像をトレースした結果を保存すると20KBほどになってしまったのは、当然と言えば当然なのですがちょっとした驚きでした。SVGの仕様はW3C標準として規定されたものなので、対応したアプリケーションであれば互換性を気にせず利用できるはずで、きちんと対応できているソフトウェアはまだまだ少ないかもしれませんが、今後は広まっていくのではないでしょうか。

ということで、今年の我が家の年賀状作りには大活躍間違いなしです。試しに、というわけでもありませんが、今年は義父に年賀状の原稿作成を頼まれてしまったので、そこで早速活用してみました。犬の絵を載せたいということだったのですが、さすがにネットからパクってきてそのまま使うというのは問題がありますので、適当な絵を持ってきてそれをわざと歪むように調節してトレースしてみました。簡単な加工で済んでしまった割にはそれらしいイラストに仕上がってしまい、妻の評価もまずまずだったのでそれを採用しましたが、自分用ならもう少しヒネりを加えたいところです。

ちなみに、対応プラットフォームはLinux, Windows, Macとなっていますが、MacではX11上での動作となるので注意が必要です。

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