私は両親が教会で知り合って結婚していますし、今父はサラリーマンをやめて牧師になっているくらいなので、小さい頃から毎週日曜は教会に通ってきて、特に意識して「信じている」ということはなくてもキリスト教の精神というものが体に染みついてしまっています。そのため、平均的な日本人よりも宗教というものに関する関心は高く、キリスト教以外の宗教についてもそれなりに興味を持っていました。しかしそれはあくまでも自分たちの世界の側から見たものであって、本当に他の宗教を信じている人たちがどう考えているのかなどということについてはよくわかりませんでした。

しかし、今回後輩が「面白かった」とかしてくれたこの本は私にとっても実際なかなか面白いものでした。

ユダヤ・キリスト・イスラム集中講座 宗教紛争はなぜ終わらないのか
井沢 元彦
徳間書店 (2004/11/20)
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前半は多神教の日本人の目から見たユダヤ教、キリスト教、イスラム教という3つの一神教がどういうものであるのか、どこが違うのかということの解説になっています。この部分については私はだいたい知っていることでおさらいといった感じだったのですが、とてもわかりやすくまとめられていて、予備知識のない人にも読みやすいのではないかと思います。

後半はこれらの宗教を代表する指導者らと筆者との1対1のインタビュー形式となっていて、それぞれの立場からの解釈と、本音と建て前が垣間見えて非常に興味深いものでした。もちろんそれぞれの宗教にもいくつもの宗派があり、そのそれぞれがまた違う解釈とスタンスを持っていますので、ここに掲載されていることで決めつけてしまうことは問題があるのですが、それでも3人が3人とも「自分たちは寛大に構えているつもりなのに相手が敵対心むき出しだ」というような言い方をしているのが面白いところです。

実はキリスト教もイスラム教ももともとはユダヤから派生して生まれた宗教なので、ユダヤ教のYHWH(ヤハウェ/エホバ)という神と、キリスト教の神、イスラム教のアラーという神は同じ神を指しているはずなのですね。また、イエスはもともとユダヤ人ですし、イスラム教では預言者の一人とされているように、かなり繋がりが強いのです。それなのに互いに殺し合わなければならないほどに憎しみあうようになってしまっているのは単なる宗教の対立ではなくて、政治やイデオロギーにより利害の衝突の結果なのだ、というムスリムの言い分には感心させられてしまいました。

結局宗教というのは信じている人が良ければそれでいいのではないかと思うのですが、どうしても「いいものだから人にも勧めたい」というか「あなたも救ってあげたい」というお節介な人がいるのが問題を起こしているのではないでしょうか。こんなことを言うと父に叱られてしまうのではないかと思うのですが、私自身は実は「聖書というのは道徳の教科書みたいなものだ」と考えていたりします。こんな不信心な者には到底理解できっこないのかもしれませんが、人に干渉しすぎるというのも問題ですよね。特にアメリカ(人)にはその傾向が強いような気がしますが、それはただの気のせいでしょうか…

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