San Marinoイタリア半島中部に位置するサンマリノ共和国の名を冠しながら、イタリアのイモラにあるAutodromo Enzo e Dino Ferrariというフェラーリ創始者親子の名を持つサーキットで開催されるサンマリノグランプリが行われました。サーキットの名前からしてフェラーリのホームグランプリであることが明らかですが、毎年多くの「ティフォシ」と呼ばれるフェラーリファンでスタンドが埋め尽くされることから、フェラーリチームも他のGP以上に気合いが入るところです。

ちなみに、サンマリノGPというと1994年にアイルトン・セナが事故死したということでも有名となってしまっていますが、実は前日の予選ではF1参戦わずか3戦目だったローランド・ラッツェンバーガーも死亡しているということはほとんど語られていない事実です。当然ながらその後サーキットは改修が繰り返され、マシンのレギュレーションも変更されて安全性は当時より大幅に向上されているはずですが、古いサーキットなのでコース幅が狭く、路面がバンピーなのは相変わらずでドライバーからの評判はあまり良くないそうです。

さて、予選はティフォシの声援を受けたミハエルがセナの記録を更新する66回目のポールポジションを獲得しましたが、それに続きバトンが2位、バリチェロが3位ということでホンダチームも「今度こそ」という思いで臨んでいたことでしょう。その後ろにはマッサ、アロンソと続き、ミハエルを追い上げたいアロンソをマッサがどれだけ抑えることができるかが一つの鍵でした。今季は輝きが若干鈍ったかに見えるライコネンは8位スタートという厳しいグリッドですが、最後尾から2位フィニッシュが可能なライコネンのことなのでこの時点で諦めてしまうのはいくらなんでも尚早というものですね。

我らが佐藤琢磨はというと、ポジションはブービーと変わりないものの、その前のMidland F1のアルバースとはわずか0.521s差にまで迫り、マシンのポテンシャルを100%以上に引き出しています。この勢いで行けば今季中盤までにはMF1と争うところまで来るのではないでしょうか。チームメイトの井出の方は同じ車に乗る琢磨と1.5s以上の差があり、厳しい状況は相変わらずです。

決勝スタートではバリチェロが失敗して5位に後退する以外、前方集団では順位の変動がなかったようです。最後尾では琢磨がアルバースをかわして順位を上げていたようですが、その直後のコーナーで井出がそのアルバースに接触してしまい、MF1のマシンは横転1回転半して逆さになって止まってしまうという大きなアクシデントになりました。12年前の悪夢をよみがえらせるあわや惨事というところでしたが、マシンはしっかりとアルバースを守り、元気に歩いて退避する彼の姿を見て私もホッと胸をなで下ろしました。その直後には「せっかく琢磨が抜いたアルバースがいなくなってしまってまた最後尾か…」という思いに変わりましたが。

この事故にによりセーフティーカーが導入されましたが、また「下手くそだなぁ」と言われてしまうようなこともなく、特に順位は変わらずレースは再開されました。しかし今回のホンダの失敗はピット作業にありました。先に入ったバリチェロではタイヤ交換に手間取って3秒ほど無駄にしてしまい、せっかく給油量を減らして短めのピットロスとする作戦であったのに水の泡となります。そしてバトンの2度目のピットインの時には給油リグを外していないのにロリポップを上げてしまったため、マシンが引っ張った給油機と一緒にクルー数人がなぎ倒されるというアクシデントを招き、大きなロスとなってしまいました。この時点でホンダのサンマリノGPは終わったと言えます。前回コントロールライン直前でリタイアしてポイントを諦めたバトンは一体どういう思いでいたでしょうか。

その後中盤以降のレースは完全にミハエルとアロンソの一騎打ちの様相で、テレビの画面もほとんどこの2台に釘付けでした。じりじりと追い詰めるアロンソを冷静に抑えるミハエル、ミハエルが一度でもミスをすればアロンソに付け入れられることは明らかでしたが、終盤ミスをしたのはアロンソの方で、見事ミハエルがポール・トゥ・ウィンを飾り、今季のタイトル争いに復帰を表明したかのようでした。2位はもちろんアロンソでしたが、3位にはほとんど画面に映らなかったモントーヤが入り、しっかりとポイントを獲得しています。

ところで琢磨の方はといえば、開幕以来3戦全戦完走だった記録が途絶え、44周目で悔しいリタイアとなってしまい、井出も33周目でリタイアとなり、2台完走のあとの2台リタイアということでSAF1にとっては厳しいグランプリとなってしまいました。ニューマシンの投入が待ち遠しいSAF1ですが、それはまだまだ先になってしまうのでしょうか…一刻も早くマシな車に琢磨を乗せて欲しいところです。

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