Archives

宇多田ヒカル – 初恋

「もう」なのか「まだ」なのか。

つい1ヶ月ほど前に宇多田ヒカルの7枚目のアルバム「初恋」が発売されました。前作「Fantôme」は私には今ひとつしっくり来なかったのですが、今度の作品は非常に気に入っていて、連続して何度も聞いてしまっています。

初恋

posted with amazlet at 18.07.22

宇多田ヒカル ERJ (2018-06-27)売り上げランキング: 4

Amazon.co.jpで詳細を見る

このアルバム制作の様子は7月16日に放送されたNHKの「プロフェッショナル 仕事の流儀 『宇多田ヒカル スペシャル』」(NHKオンデマンド)で特集され、ロンドンの自宅での作曲の様子や、スタジオミュージシャンらと音作りに悩む様子などが描かれており、この番組を見て一層彼女の作品に惹かれるようになりました。また演奏する人達の顔を見たことで、曲を聴きながら彼らの演奏する様子が浮かぶようになり、各パートの旋律にも注意を払うようになった気がします。

宇多田ヒカルは1998年末の「Automatic」での鮮烈なデビューから今年で20周年ということになりますが、デビュー時点で15歳という若さだったため、現在でも35歳という若さです。その若さですでに人生の半分以上を日本有数の歌手として過ごしているわけで、彼女と音楽とは切っても切り離せないものでしょう。そんな中での2010年の突然の「人間活動宣言」には驚かされましたが、確かにそのまま「外の世界」を知らないままでは本人の人間性にも音楽的な広がりにも支障をきたしていたはずですね。15歳のデビューからは周囲の大人に腫れ物に触るように接せられることも多々あったでしょうから、そのような状況でずっと過ごしてきた人の気持ちはなかなか理解できませんが、精神的な苦しみも一般人の想像を超えるものがあるのではないでしょうか。

それはさておき、私が普段聞く音楽はほとんどがいわゆる洋楽です。しかし、宇多田ヒカルの曲だけは例外的に以前からよく聞いていたのですが、今回のNHKの特集を見て理解したのは彼女の曲はすでにいわゆる邦楽ではないということです。日本人が作詞作曲し歌っている日本語の曲ではありますが、その曲の音を作っているのは外国のミュージシャンらであり、彼らの解釈のもとに演奏されているものなのです。私はこれまで日本人歌手の海外スタジオでのレコーディングの意味がよく理解できずにいましたが、少なくとも宇多田ヒカルのケースについては非常に意義のあるものであるということがわかりました。

ということで、彼女が最後まで苦労して作りあげた「夕凪」にも込められた思いを噛み締めながら聴いていきたいと思います。

Once Around the World / It Bites

何年経っても好きなので。

今からちょうど30年前、私がまだ高校生だった1988年、東京では音楽中心のFMラジオ局であるJ-WAVEが開局し、それと前後して渋谷ロフトの1階にWAVEという大規模CD/レコード店が開店しました。当時すでに渋谷にはタワーレコードがありましたが、現在の山手線沿いのビルのような大きな店舗ではなく東急ハンズ近くの薄暗いビルにあり、まだ洋楽はちょっとマニアックな雰囲気がありました。そんな状況の中で当時は洋楽中心に一日中音楽を流し続けていたJ-WAVEによって認知度は高まり一般的なものになったのか、タワーレコードもWAVEも連日大変な混雑でしたが、私も足繁く通っていたものです。

ちょうどそんな1988年、イギリスのIt Bitesというプログレッシブ・ポップのバンドがリリースしたOnce Around the Worldというアルバムがあります。私は当時このアルバムをタワーレコードかWAVEかで購入したはずなのですが、当時からとても気に入っていて、今聴いてもその魅力は一切衰えることがありません。イギリスのアルバムチャートで最高43位ということなのでまったく大したヒットでは無かったようなので、このアルバムに偶然巡り合うことができたのは奇跡としか言いようがありません。

Once Around the World

posted with amazlet at 18.01.21

It Bites Msi (2006-12-19)売り上げランキング: 331,647

Amazon.co.jpで詳細を見る

「プログレッシブ・ポップ」とは一体どういうジャンルなのか、あまりピンとこない人も多いかと思います。プログレッシブ・ロック、いわゆる「プログレ」といえばKing Crimson, Pink Floyd, YES, Genesis, Emerson Lake & Palmerという5つのバンドが「プログレ5大バンド」とされていますが、これらの他にもたくさんのバンドが様々な音楽性を持って活動しているジャンルです。そのわかりやすい特徴は曲の途中でテンポやキーが変わるというところではないかと思っていますが、これはプログレッシブ・ポップにも継がれていて、簡単に言えばプログレッシブ・ロックをちょっとソフトにした感じのものではないかと思います。とは言っても、その境界は非常に曖昧で、プログレッシブ・ロックや普通のロックやポップスともあまり区別はされていないかもしれません。

残念ながらCDではもう新品はかなりプレミアム価格になっていますし、中古でも入手は難しくなっているようです。また、iTunes Storeなどでも配信されていないようです。しかし、YouTubeにアップロードしている人が多数いるようなので、これらで聴いていただくしかないのでしょうか。音楽を言葉で説明するというようなことは私にはできませんので、アーティストの収入にならないのは非常に残念ですが、関心を持った人にはぜひ一度聴いていただきたいと思います。

しかしこのように入手が難しくなってしまうのは、メディアが廃れていくことによって文化が埋もれていってしまうということで、大変残念に思います。もちろん、例えば18世紀に大衆がどのような音楽を聞いていたかというようなことはもうほとんどわからないわけで、それと同じようなこととはいえ、あまりに早いのではないでしょうか。何でもかんでも未来永劫というような訳にはいかないでしょうが、そういう方向にも技術が活用されることを願いたいものです。

Taylor Swift - Red

まだまだ知らない世界がありました。

数ある音楽ジャンルの中でも日本人には馴染みがないものの一つに「カントリー・ミュージック」というものがあります。アメリカでは最も人気が高いものの一つながら他の国ではあまり聴かれていないという、ほぼアメリカ特有といっていいジャンルですが、アメリカでは日本人にとっての演歌以上に老若男女を問わない人気があるようです。これまでの私自身のカントリーのイメージも、口ひげを蓄えた金髪白人オヤジがギターを抱えて唸っている、というようなものだったので、どうして今だに根強い人気があるのかとちょっと不思議に思っていました。しかしそんなステレオタイプなイメージは誤ったものだったようです。

日本の演歌歌手でも若手で活躍している有名な人が何人かいますが、カントリーで言うとTaylor Swiftです。16歳でメジャーデビューを果たして最初のアルバムTaylor SwiftでBillboardのカントリー・アルバム部門で1位となり、2枚目のアルバムFearlessではBollboard 200で1位という快挙を成し遂げ、23歳の現在も乗りに乗っています。また、自分の交際相手や失恋を歌にすることでも知られています。私もこのようなことはだいたい知っていたのですが、実際にはあまり意識して歌を聴いたことがなく、ただ「カントリー」という先入観でなんとなく距離を置いていました。

しかし先日、昨年10月に発売されたアルバムRedの売れ行きも非常に好調で、Amazon.comでのセールのおかげもあってダウンロードランキングで1位になっていたので試しに聴いてみたところ思いの外良かったので、サクッとAmazon MP3で購入し、それ以来かなり頻繁に聴くようになりました。

Red

posted with amazlet at 13.01.27

Taylor Swift Big Machine Records (2012-10-22)売り上げランキング: 593

Amazon.co.jp で詳細を見る

実は実際に聴いてみると「これがカントリー?」と思ってしまうほど、曲調はかなりポップで、かつバラエティがあります。これは今回のアルバムでは何人かの共同制作者を迎えているおかげもあるかもしれません。また時折カントリー特有のコブシ回しのようなものが垣間見えることはありますが、Taylorの澄んだ歌声が美しく非常に聴きやすいのではないでしょうか。私はかなり魅入られてしまいました。

歌が好きになると歌っているTaylor自身も気になるものなので、色々調べてみました。180cmの長身でスラっとしていて、特に最近のPVで見ると濃い目のメイクのせいでキツく見えてしまいますが、それ以外の動画で見るとやはり若い女の子らしくキャピキャピした感じのようです。ウェブサイトのAboutでは

I’m easily excited, thrilled, scared, and shocked. I’m 23 now, but I never stopped jumping up and down when something wonderful happens.

と言っていますが、そういうところが男性にはキュートに見えるものです。しかし、10歳の頃から詩を書き始め、11歳でデモテープを制作、学校ではカントリーが好きということで笑われながらも頑張ってきた、という筋の通ったところから芯の強さがあるのは間違いないと言えるでしょう。まあそうでなければこんなトップアーティストになんてなれるわけもありませんね。

ということで、こうなるとぜひ生で聴いてみたくなるものですが、デトロイトにはこの5月に来るそうです。既にチケットはほとんど売れてしまっていますが、なかなか日本には来てくれそうにないので聴きに行っておきたいところです。問題は1人で夜のデトロイトに行くのがちょっと怖いこと…