Lord of War映画ワールド・トレード・センターでは主役の一人Sgt. John McLoughlinを演じているNicolas Cageは、本名をNicolas Kim Coppolaといい、その名からわかる通りゴッドファーザーで有名なかの偉大な映画監督Francis Ford Coppolaの甥に当たるのだそうです。本人は「コッポラの甥」と言われるのを嫌いCageという芸名を取ったのでしょうが、Leaving Las Vegasでオスカーを獲得するなどその役者としての実力を疑う人はいないでしょう。私も彼の主演映画はずいぶん観ています。

今回は、そのNicolasが武器商人Yuri Orlovを演じ、実在の武器商人数名のエピソードをまとめて架空のある男の一生として描いた映画ロード・オブ・ウォーを観てみました。

ロード・オブ・ウォー
ロード・オブ・ウォー

posted with amazlet on 06.10.17
日活 (2006/06/09)

実話を元にしているとはいえ数人分のエピソードをまとめているため実話以上にドラマチックなものとなっているのでしょうが、Yuriの一人称の視点で淡々と描かれている割には次々と展開するストーリーに引き込まれるような魅力があります。お話でしか聞いたことのないいわゆる「死の商人」の世界の話ですが、「実話を元にしている」と言われるとそれだけでリアリティを感じてしまうのはまんまと騙されてしまっているのでしょうか。

兵器を大量に売りさばきながら本人は人殺しを望んでいるわけではないというところには矛盾を感じるところですが、テロリズムの撲滅と戦争反対を同時に叫んでいる一般の人達も実は同じような矛盾に陥っているのかもしれず、それもテーマの一つなのかもしれません。対話で解決、というのは価値観の異なる相手とではかなり困難で非現実的なものでしょうから、干渉しようとする限り何らかの衝突は免れないものではないでしょうか。Yuriは干渉しないことでスルリと困難をくぐり抜けているようですが…

また、アフリカなどの貧困地域での紛争をダシにアメリカを始めとする国連の常任理事国などが武器を売って儲けているというのは何ともやりきれない思いにさせられます。紛争に巻き込まれて手足を失った子供たちや戦いにかり出される少年兵士らの姿は痛々しいものですが、目を背けてはいけない現実なのです。血を見るのも苦手な私が自分自身で武器を振るうことは考えられませんが、そういう環境に生まれずに済んだことは幸運以外の何物ではありません。

単純に戦争の悲惨さを見せつけるありきたりな映画とは違う視点で描くことで、観客を飽きさせずにこうしたテーマを伝えることができたというのは素晴らしいことではないでしょうか。アクションやスタントはほとんどなく、本当に淡々と進められていくのに引き込まれてしまう、不思議な魅力を持った映画でした。

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