ITmedia私の人生は変わったんでしょうかねえ…?

インターネットの情報サイトに掲載される、いわゆるネット業界についての記事というと、その分野の人でないとわからないようなマニアックなものか、あるいはビジネス誌の記事のような堅苦しいもの、さもなくばカタカナ語を連発したミーハーなものが多くなってしまうのではないかと思います。私はもうそういう記事には辟易していて、ニュースサイトでも新製品紹介以外はほとんど読むこともなくなっているのですが、本来はそんな面白くもないことだけで業界が動いているはずはなく、様々なドラマがあるのは当然のことです。今回読んだ「ネットで人生、変わりましたか?」という本は、そんなネット業界で光っている人たちを人間として取材したものをまとめたものです。

ネットで人生、変わりましたか?
著:岡田 有花 , 他
ソフトバンククリエイティブ (2007/06/01)
ISBN/ASIN:4797337370

もともとソフトバンク系のITmediaに掲載された、岡田有花記者の記事を中心にまとめられたもので、2003年から2007年までを3部に区切り、それぞれの時期に話題となって取り上げられたサービスや技術を生み出し支えた人たちを取材した記事を10あまりずつ掲載しています。その取材対象となった人たちははてなの創業者近藤氏ミクシィ笠原氏などといった業界の有名人ばかりではなく、私はこの本で初めて知ったというような名もない人々もいます。しかしこれらの人々は皆キラリと光るものを持ち、また情熱を持ってネットに接している人たちばかりです。また、ギラギラとした金儲け主義丸出しの人はおらず、記事を読んでいて暖かくなるような、なんとなく励まされてしまうような人が多いのではないかと思います。

また、著者の岡田氏が一躍有名となったらしい「IT戦士のクリスマス」の企画も毎年の分が収録されていますが、これはちょっとくどいような…おそらくITmediaのサイト上で1年おきに見る分には風物詩的なもので気にならないのでしょうが、1冊の本で間を置かず何度も目にするとやはり飽きてしまうものです。これが氏のアイデンティティだとするとそれもまた悲しいものがありますが…

まあしかし、ネット社会を取り上げていながら専門知識は全く不要で、そこに生きる人たちの生に近い姿に触れることができるものとしてなかなか良い読み物なのではないかと思います。岡田記者の新人時代からの記事がまとめられているので初めのうちはやや物足りない感じもありますが、ページが進むにつれて成長する様子を見守るような体験までできてしまうと思えば…そんな体験は別に要らないと思いますけどね。