THX 1138この作品なくしてスター・ウォーズは生まれなかった。

George Lucasといえば偉大なフィルムメーカーとして、特にSF映画を語る上では欠かすことのできない、あまりにも有名な人です。スター・ウォーズを生み出したことでその後のSF作品に多大な影響を与えたことは言うまでもなく、特殊効果の重要性に目を付けてILMを設立したりというところでも映画産業に与えた影響ははかりしれません。

そんなLucasですが、意外にも自身が監督した作品はこれまでに6作品と少なく、そのうち4作はスター・ウォーズのエピソード1~4であり、残る2作もスター・ウォーズ以前の作品となっています。今回はそのうちの1作、Lucasがプロの映画監督として初めて製作した「THX 1138」を観てみました。

THX-1138 ディレクターズカット
監督:ジョージ・ルーカス
ワーナー・ホーム・ビデオ (2007/11/02)
ISBN/ASIN:B000W74DKO

もともとLucasが南カリフォルニア大学の映画学科に在籍していた当時に課題として製作した「電子的迷宮/THX 1138 4EB」という作品を、長編化してリメイクしたものです。もちろん劇場公開を前提としたものなので当初の短編と仕上がりは全く別物となっているのでしょうが、基本的な設定やコンセプトは共通したものとなっているのではないでしょうか。残念ながら私はオリジナルの方は観ていないのですが、非常に興味の湧くところです。

人々がみな精神を投薬により抑制され、絶えず監視・管理されて機械の部品のごとく働かされている25世紀の世界が舞台で、登場人物は男女を問わずみなスキンヘッド、警官はメタリックなマスクのロボット、居住空間はすべてモノトーンという異様な世界です。人々はみなアルファベット3文字と4桁の数字を名前として持ち、男女の恋愛も禁じられています。そして主人公の名前はTHX 1138、ルームメイトの女性はLUH 3417といいますが、彼らがこの世界に疑問を感じ、投薬を拒否し、愛を育み…というのがこの物語です。

この作品は1971年の公開なので、この40年近く前に考えられた500年後の世界というのはまさにレトロフューチャーで楽しめます。巨大なコンピュータールームに収まる真空管コンピュータというのもなんだかシュールな感じさえします。ただ、今初めて観た私はどうしてもそういう見方になるわけですが、公開当時の観客にはあまりに斬新で理解を超えていたのか、興行成績はさんざんだったようです。まあ実際私が観ても難しいところがありましたし、新しすぎたということなのでしょう。

しかし、Lucasはこの作品が一番好きだと言っているそうなので、彼の思う通りに作ることができたということなのでしょう。テーマが重苦しく暗いものなので、作品全体の雰囲気も重くなってしまっていますが、何となくスター・ウォーズ・エピソード4と共通する部分があるようにも感じられます。スター・ウォーズは爆発的にヒットしたことでその後大きく流れを変えていくことになりましたが、このTHX 1138こそLucas本人がそのまま現れている作品なのかもしれません。