Lift東京都港区の区営住宅で、扉が開いた状態のまま上昇したエレベータに挟まれて高校生が亡くなるという痛ましい事故が起こり、にわかにエレベータの安全性がクローズアップされています。

特に、今回事故を起こしたのと同じスイスのシンドラー社製のエレベータでは他にも閉じこめられるなどの故障が相次いでいるかのように報道されています。しかし、三菱自動車のクレーム隠蔽問題の時に三菱車ばかりが炎上しているかのごとく報道されたのと同じように、実際には他社製のエレベータでも閉じこめられるようなことはそう珍しくないのではないでしょうか。私の住むマンションのエレベータは国内メーカー製ですが、2,3年前に閉じこめられた人がいるとかで、対策としてインターホンで24時間態勢で監視センターと通話ができるようになりました。シンドラー社自体は世界シェア第2位の超大手メーカーであり、相応の実績を持っているはずですから、そんなに安全性・品質に問題があるとは思えません。

しかしまずいのは事故後のマスコミ対応ではないでしょうか。警察の現場検証や捜査には積極的に応じているようなのですが、マスコミに大してろくに情報を提供しようとしないというのはマスコミの反感を買うだけでなく、一般市民が不安を抱えたままになってしまいます。また、同社ウェブサイトには

報道においてシンドラーの名前が大きく報じられているのは残念なことですが、ご遺族の方への哀悼の意を除いては、捜査当局により事故の原因究明が確定されるまで、コメントを表明することを控えることとしています。

事実が公表された時点で、シンドラーの名前が大きく報じられることはなくなると確信しています。

エレベーターでは世界第2位の現地法人であるシンドラーエレベータ株式会社は、我々の製品及び保守が高い安全基準を満たしていると自負しています。

というプレスリリースが掲載されていますが、これではあまり日本では通用しそうにないメッセージのように感じてしまいます。事故の原因がどういうことであったとしても、同社のエレベータの扉が開いたまま上昇したというのは紛れもない事実であり、「高い安全基準を満たしていると自負」されたところでそうすんなり受け入れられるものではないでしょう。

工業製品である限り不良・故障というのは避けることができないものであり、いかにその確率を低く抑え、さらにそれが顕在化しないようバックアップ措置をどのように施しておくかというところが「安全性」の違いになるでしょう。安全性の問題のあるエレベータが世界第2位のシェアを得ることなどできるわけはありませんから、今回の事故はいくつもの不幸が重なって起きてしまったものなのでしょう。事故が起こってしまったのが現実である以上、シンドラー社には説明責任を果たし、今後の対策を万全なものとするようお願いしたいところです。

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