やめた方がいいのは分かっていても行ってみたくなってしまいます。

本に限らず題名というのはその商品自体の売れ行きを大きく左右するとても大事なものだと思いますが、あまりに凝りすぎると内容とかけ離れたものになってしまい、本当に求めている人がそれにたどり着けなくなってしまったりするのではないかということがあります。この「転がる日本にバカ満ち足りて – あきらめの楽園へ」という本も、図書館で旅行書やガイドブックが並ぶ棚の中で見つけて、どうも浮いているそのタイトルが逆に気になってしまい手に取ったのですが、開いてみると面白そうだったので読んでみると非常に楽しいものでした。そういう意味では実はこのタイトルも成功なのかもしれません。

この本は雑誌BUBKAに連載されていた「日本退屈愛好協会」の記事をベースに全面改稿したものということなのですが、「退屈こそ人生最良の友」というスローガンを掲げる「日本退屈愛好協会」として活動しているらしい著者が日本各地の「退屈スポット」を実際に訪れ、写真つきで紹介しているものです。取り上げられているのは全51カ所にも及ぶのですが、実際に私が行ったことがあるというところはわずか5カ所、知ってはいるが行ったことはないというところが14カ所で、残りは聞いたこともないようなところばかりです。

内容は大きく3部に分かれていて、順に「触発編」「発動編」「くるくる編」と名付けられてはいますが、その意味はよく分かりません。私なりに解釈すると、第一部は完全に寂れてしまっているところで、企画として相当無理があるものばかり、今にも潰れてしまいそうなところと、実際に既に潰れてしまったところがほとんどです。ただ、この中には私の好きな(?)「ハワイ海岸」も含まれていて、そんなことを言っても仕方がないじゃないか、と言いたくなります。まあ著者もそんなところが嫌いではなくてわざわざ訪れているわけですし、面白がって言っている私もまさしく同類なわけですが。

第二部はそこそこ人は入っていて、つまらないわけではないがちょっと問題を感じるようなところが集められています。その問題点というのは様々で、作品を詰め込みすぎて全てを台無しにしているという美ヶ原高原美術館や、ことあるごとに金をむしり取られていくという那須ワールドモンキーパークが紹介されていますが、私の実家のごく近所にある町田リス園

ここは学校教育終了後の障がい者の社会生活に必要な能力を養い育てるといった授産施設としての一面もあります。

とされているのに

なんか現状は「平等な社会参加」と言うより「教え込まれて使役されている」ように見えるのは気のせいか?

と取り上げられています。私は実家から歩いて行けるのに中に入ったことがないのですが、そんなだと聞くと子供を連れて行っていいものかどうか迷ってしまいます。

最後の第3部は「期待しないで(退屈を期待して?)行ってみると実は結構良かった」というところが集められているような感じです…いや、そうでもないかもしれません…まあ全部が全部そうではないような気もするのですが、普通に行ってみても楽しめそうなところが多く、マクドナルド・ミュージアムや養老天命反転地伊豆アンディランドあたりは私もぜひ近いうちに行ってみたいと思いました。酷いものは酷いと書いてくれている本なので、逆にこれらの場所であれば家族で行っても失敗はなさそうな感じです。

それにしてもこの本はズバリ私のツボを突いてきたので一気に読み切ってしまいましたが、日本にはまだまだ数え切れないほどの退屈スポットがあることでしょうし、今後もいくつも生まれては消えていくと思うので、日本退屈愛好協会の今後の活動にも期待したいところです。といってもこの「協会」の実体はないのでしょうけどね…