The Dark Knight Risesもっともっと続きが観たい。

2012年7月20日、アメリカ・コロラド州オーロラで行われた「ダークナイト・ライジング」のプレミア上映の際、ガスマスクに防弾ベスト、ヘルメットをかぶって拳銃やライフルで武装した犯人James Holmesが催涙ガスを噴射させた上で銃を乱射し、12人が死亡、58人が負傷するという大変痛ましい銃撃事件が起こりました。こういう事件が起こるたびにアメリカの銃規制問題が議論されることになりますが、全米ライフル協会の強力なロビー活動により立ち消えになってしまい一向に前へ進むことができません。今回の犯行に使用された銃器も全て合法的に入手されたものだということですが、スーパーマーケットでライフルや実弾が購入できるという状況はやはりどう考えても異常です。

ということで、こんな事件のお陰で模倣犯を防ぐために各地のプレミア上映会なども中止されてしまい散々なケチの着いたこの映画ですが、前作「ダークナイト」同様非常に前評判の高い作品だったので、ぜひとも観たいと思っていました。しかしシリアスな内容だけに字幕なしで理解できるかどうか…と思っていたところでタイミングよく日本出張が入り、しかも休日を挟むことができたのですかさず観に行ってみることにしました。

Christopher Nolan監督によるバットマンシリーズ3部作の完結編ということですが、前作同様タイトルに「バットマン」と入れていないところがまずいいですね。しかし邦題はいただけません。原題は”The Dark Knight Rises”と現在形なのに、勝手に現在進行形にしてしまっているため、ニュアンスが変わってしまっているのです。その違いを言葉で伝えるのは難しいのですが、なんとも言えない違和感があります。
The Bat
それはともかく、作品の方は非常に素晴らしいです。スーパーヒーローであるBatmanが実に人間臭く、決して無敵の存在でないというところが良いです。一方の敵役であるBaneが何故か非常に強く、またマスクのデザインが異様さを掻き立てています。その行動も狂気的ですし、完全に忠誠を尽くす配下の者どもも異様です。こんな敵に立ち向かっていってBatmanに勝ち目はあるのか…という悲壮感こそがこの作品全体を支配しているもののような気がします。

バットマンのお楽しみの一つといえば登場する各種メカですが、今回はBatmobile, Batpodに加えてThe Batという名の空を飛ぶ乗り物が登場しました。BatmobileやBatpodと共通のテイストを持つデザインでまたかっこよく、モデルを手元において眺めたくなるようなメカメカしさがとても良い感じです。しかしあの機動性からしてそんなに厚い装甲を持っているとはとても思えないので、そのあたりがちょっと非現実的なところではありますね。まああくまでファンタジーですからこれで良いのです。
Selina Kyle
もう一つ、この作品ではCatwomanとされるSelina Kyleが登場しますが、それを演じるAnne Hathawayがまた素晴らしいです。漆黒のレザースーツに身を包んだ姿は実にセクシーですが、いかにも強そう、ではない所が良いです。どうしてもアクション映画で見慣れた女優さんでは活躍がイメージできてしまいますが、そうではないのがいいです。「プラダを着た悪魔」で見た彼女がCatwomanですからね…といっても伝わりませんね。

ということで、最後は非常に悲しい結末を迎えるわけですが、これが三部作で終わってしまうというのは非常に残念な気がします。Batmanシリーズでなくてもこのような重厚な作品はNolan監督ならまた作ってくれるかもしれません。しかしこの世界観はちょっと独特ですよね… でも完結したといっておきながらまた続きが出てくるというのもなんだか潔くありませんし、もっと観たいというくらいでやめておくのが良いのかもしれません。