World War Z: Brad Pitt as Gerry Laneグロさはなくても恐ろしい。

映画のテーマとしてゾンビがよく取り上げられるのはナゼなのでしょうか。死体が動き出して生きた人々を襲い、ゾンビに噛まれると噛まれた人もまたゾンビになってしまう、というのがだいたい最近の決まり事になっていますが、そんな恐ろしい存在なのにホラー映画ばかりでなく先日観た「ウォーム・ボディーズ」のようにゾンビを対象にしたラブコメディまでできてしまうのにはちょっと驚きます。死体が動く、ということでリアルに描こうとするとどうしても気持ち悪さが先立つものですが、今回観た「ワールド・ウォーZ」はPG-13という低いレーティングになっているのでグロテスクな描写は一切なく、ゾンビに襲われるというミクロな恐怖よりも人類が滅亡の危機に瀕するというマクロな恐怖感を掻き立てられるものになっていました。

舞台は現代のアメリカを中心とした世界各地、Brad Pittが演じる主人公のGerry Laneがフィラデルフィアで家族とともに車で渋滞に巻き込まれていると、突然前方でパニックが巻き起こります。Gerryはこの瞬間初めてゾンビ的なものの存在を知ることになり、家族を連れて必死の逃避行を始めることになりますが、元国連調査員だったGerryは元同僚に請われて、家族の身柄の安全と引き換えにゾンビを食い止めるための調査に協力することになる、というような話です。
World War Z
この映画に登場するゾンビの最大の特徴は、とにかく素早いということでしょう。動作は非常に機敏で、力も生きている時と同等以上にあるのではないかと思われます。また人間が感染してからゾンビ化するまでの時間も非常に早く、襲われたそばからゾンビ化していくので、都市などで人が集まっている所ではあっという間に壊滅的な状況になってしまうようです。また予告でも非常に印象的でしたが、蟻の大群のように押し寄せたゾンビが折り重なるようにして高い塀を乗り越えてしまうシーンなどはこれまでのゾンビ映画にはなかった表現ではないでしょうか。

そもそもウィルスなどにより「死んだ」人間が動きまわり生きた人を襲うようになるという事自体が荒唐無稽とも思われるのですが、昨今の鳥インフルエンザのアジアでの流行など、新しい病気のパンデミックに対する恐怖もあり、これに似たものによって同じような状況になってしまうということがないとは言えず、この映画のリアリティを補強しているとも言えるのではないでしょうか。

この作品はMax Brooksによる同名の著作を原作として作られたものですが、この本で中心的に描かれているのはこの映画でのゾンビとの戦いである「ゾンビ対戦」の後の話であり、もともとこの映画自体も3部作として企画されていたものらしく、公開以来の好評により続編に着手したとのことです。この作品では2億ドルという高額の制作費がかかってしまったようですが、それに見合った利益が上げられそうだと判断されたということですね。実際私も良くできた映画だと思いますので、「ゾンビなんて…」という人も観れば楽しめるのではないでしょうか。

WORLD WAR Z
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