Pacific Rim - Gypsy Dangerテーマは愛、かな。

皆さんが「怪獣」と聞いて思い浮かべるのは何でしょうか。世代・年代によってゴジラウルトラシリーズ仮面ライダーシリーズスーパー戦隊シリーズと別れるのではないかと思いますが、若い世代の人にはあまりピンと来るものが無かったりするのでしょうか。しかし、宇宙かどこかから巨大な怪物がやってきて地球上で暴れまくる、というのはあまりに荒唐無稽な話ですが、それでも数多くの作品が作られ、沢山の人達、特に子供達に愛されてきたというのはなかなか興味深いものです。今回はそんな怪獣映画に対する愛の感じられる最新映画「パシフィック・リム」を観てみました。
Pacific Rim - Kaiju
近未来において、太平洋の海底に開いた異次元との出入口から巨大な怪物、その名も”Kaiju”が現れ、太平洋沿岸の都市が襲撃されます。これに対し、人類も巨大なロボットJaeger (イェーガー)を作り対抗します。パイロットの神経を接続して操縦するこのJaegerも当初は一人乗りでしたが、その精神的負荷の大きさから二人乗りに変更され、その二人のパイロットは互いの神経を共有して一体となって操縦する必要があります。このJaegerにより一時は人類が優勢に立ち襲撃を抑えこむことができていましたが、その後次第に頻度は増し、Kaijuもより大きく強力になり、再び苦境に立たされることになります。そんな中で5年前にともにパイロットであった兄弟をKaijuとの戦いで失ったRaleigh Becketがある作戦のために再び招集されます。
Pacific Rim - Pilot
この何種類かあるJaegerがそれぞれオリジナリティがあって面白いのですが、どれもいかにも巨大ロボットというデザインでなかなかいいです。またコクピットの様子は、操縦席に座ってレバーを操作するというようなものではなく、Jaegerがパイロットと同じ動きをするようになっているのでパイロットも全身を動かして戦う、というものです。二人のパイロットが完全に同じ動きをしないとおかしな事になりそうなものですが、それが「心をひとつに」ということなのでしょうか。
Pacific Rim - Rinko Kikuchi as Mako Mori
しかしこの作品で私が一番いいと思ったのは、Raleighの相棒となるMako Mori(森マコ)という日本人パイロット候補生を演じる菊地凛子です。「バベル」で助演女優賞にノミネートされた日本人女優としてはハリウッドいちの実力派と言っても過言ではない彼女の演技が非常に光っていたのではないかと思います。ちなみに彼女とその周囲の人達の間で一言二言ずつ日本語の台詞があるのですが、なぜか彼女の日本語までちょっと英語訛りというかおかしなイントネーションになっているようだったのは私の気のせいでしょうか。

また、Makoの記憶にあるシーンに登場する幼少期のMakoは芦田愛菜が演じています。彼女にはセリフがありませんが、それでもかなりしっかりした演技を見せています。テレビでもてはやされている時にはただ可愛いと言われているだけだったので私は関心がなかったのですが、この作品を観てすっかり見くびっていたのを思い知りました。

ということで、これは単なるロボットと怪獣の戦いを見せるだけの映画ではなく、思っていた以上に楽しむことができました。絶望的なところからの逆転というのも定石かもしれませんが、なかなかドラマティックです。なお、エンドクレジットではこの作品がRay Harryhousen本多猪四郎という二人の怪獣映画の巨匠に捧げられていますが、監督のGuillermo del Toroの愛が感じられる作品になっているのではないかと思います。