紅白といえば思い出すのがLondonはLeicester SquareにあるOdeonです。普通の人はそんなものを思い出したりはしないと思うのですが、私が渡英した20+α年前の最初の春、日英協会の主催ではなかったかと思うのですが、Odeonの大スクリーンで紅白歌合戦を上映するというので見に行ったのです。当時はインターネットが普及した今とは違い、雑誌なども数ヶ月遅れのものを何倍もの値段で購入しなければならず、国際電話もあっという間に数千円という環境だったため、みな日本からの情報に飢えていたのです。

世界各地で順に上映されてきたフィルムなので画質はひどいものでしたが、Leicester SquareのOdeonといえばプレミア上映で王室メンバーが観に来るような、イギリスでもっとも有名な映画館の一つですから、その大スクリーンで見る紅白はそれなりの迫力がありました。当時は私もまだ中学生だったので、NHKがどうとかいう偏見も持たず、素直に見ていたのではないかと思います。

しかし、印象に残っているわけはそういうことではないのです。実は、トリの五木ひろしが歌っているとき、スクリーンの中央付近がぼやけてきたかと思う間もなく、映像に穴があいて止まってしまったのです。なんとフィルムが熱で溶けてしまったという、何ともお粗末な出来事だったわけですが、結局Odeonの大スクリーンに投影するために必要な光量のランプの熱に耐えられるフィルムでなかったということが原因なのでしょう。Londonのあとも世界中を回るはずだったフィルムはそこで息絶えてしまい、またその翌年以降も同様のイベントの話は聞かなかったので取りやめになってしまったのでしょう。

あとにも先にもそういう場面に遭遇したことはありませんが、やはり普通はやらかさない珍事ということなのでしょうか。それにしても、Odeon恐るべし、です。

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