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振替輸送

ツキのない一日。

学生時代の友人が東京で就職した際、勤務先のビルの上層階が社宅になっていたので通勤はエレベーター…なんていう特殊な例はありましたが、大都市圏に住んでいる人の多くは満員電車に揺られて1時間以上なんていうのも当たり前の世界なのでしょうが、東京で生まれ育ちながらそれが嫌で地方都市へと飛び出した私は普段の通勤が徒歩なので、たまに出張や研修で大阪や東京で混雑した電車に乗るのも苦痛でなりません。先週から珍しく講演会や研修が集中したため、8日間で4回も兵庫県の東端、尼崎まで行くことになったのですが、木金は朝から晩までの研修だったため通勤の混雑にもろに当ってしまったのですが、金曜日はそれだけでは飽きたらず散々な目に遭ってしまいました。

目的地はJRでも阪急でも行けるところなので、三ノ宮駅で阪急に乗り換えようと改札を通ってホームに上ってみると、木曜日よりもちょっと混んでいるのが気になりました。ちょっと時間が早いからかな〜などと思っているとアナウンスが入り、車両故障でダイヤが乱れているとのこと。そこでウェブサイトで調べてみるとどうも発生したばかりでまだ復旧予定も明らかでなかったので、さっさとJRに戻ることにしました。この時すでにICカードで改札を通ってしまっていたので振替乗車票を発行してもらい、幸い大きな影響はなく目的地に到着しました。なお、目的地付近で阪急の高架下をくぐる際、電車は既に復旧していたようですが、おそらく混雑していたでしょうから良しとします。実はこの振替輸送というのは40年以上生きてきて初めての経験だったのですが、この日はこれで終わりませんでした。

帰りは阪急に乗ろうと駅へ向かい、改札口でICカードの処理をしてもらおうと朝の振替乗車票を渡そうとすると、なぜかまた新しい振替乗車票を渡されました。腑に落ちないので聞いてみると、なんと今度はJRの方が止まっているとのことで、三ノ宮でもJRには乗ることができないとのことです。幸い姫路から大阪までの間はJRと私鉄とで完全に二重化されているので、時間はかかりますが山陽電車で帰ることは可能なので、そうすることにしました。

しかし、普段はそんなに乗客の多くない、たったの6両編成の山陽電車なので、振替輸送となると大変な混雑になってしまいます。阪急との接続地点となる高速神戸駅に阪神からの直通特急がホームに入ってきた時には既にすし詰めの超満員で、降りる人もほとんどいないので各ドアから1人か2人しか乗り込むことができません。アナウンスでは次の電車を待てと言いますが、次の電車だって空いているわけがありません。私は幸運にも2台目の列車になんとか乗ることができたのですが、その後の停車駅でも乗れない沢山の人達に見送られることになりました。そんな状況なので停車時間が長くなり、列車は遅れに遅れて当初の予定より90分ほど余計にかかってしまったでしょうか。実は私はこの日忘年会があったので急いでいたのですが、結局参加できたのは1次会の残り30分というところで、急いで食べるだけで終わってしまいました。

結局何が原因だったかというと、JR神戸線の灘駅と六甲道駅の間にできる摩耶駅の工事現場で作業の足場が倒壊し、車両に接触したということだそうで、午後1時過ぎの事故発生から10時過ぎまでのおよそ9時間もの間運休となったようです。これによりJR西日本は大きな損害を受けたでしょうが、写真を見ると接触したのが車両の側面だからまだ良かったものの、正面から突っ込んでいたとしたら人的被害も免れず、不幸中の幸いといったところではないでしょうか。宴会に遅れたくらいで文句を言っている場合ではないかもしれません。

なお、この日の神戸は強風が吹いていたようで、ルミナリエのイルミネーションの一部が倒壊という事故も起こっていたようですが、これがもし観客で賑わっている最中であったらどうなっていたことでしょうか。JRにしろルミナリエにしろ怪我人がなかったのは奇跡的なことかもしれません。

Amtrak Empire Builder

田舎をひた走る。

今月はいよいよ長男が日本の高校に編入するために帰国し、妻も付き添いで一時帰国しているのですが、ちょうどその同じ日に私は次男を連れて念願のAmtrakでアメリカ横断の旅に出ました。横断といってもミシガンから西側のみですが、まずはシカゴまでWolverineという列車で向かい、そこからEmpire Builderというアメリカ北部を横断する列車で2205マイル(3549km)をおよそ44時間で走りワシントン州シアトルへと向かうというものです。

自宅から最寄りの駅までは妻の車で送ってもらいましたが、そこを出発する列車が既に1時間ほど遅れてしまい先行きはかなり不安なものとなりました。シカゴUnion Stationにはなんとかそのままの遅れで到着したので、駅近くにあったEpic Burgerという店でハンバーガーを食べ、Empire Builderの出発を駅で待ちました。今回私たちは個室寝台車を予約していたので駅にあるラウンジを利用することができましたが、飲み物とスナックが無料とは言うものの種類も少なく、席の数もあまり余裕が無いのでそれほど良いものでもありません。これには期待しない方が良いでしょう。

時間が近づくと呼び出しがかかり、一斉に列車へと向かい乗り込みます。個室は予約時に指定され、車両には番号が付いているのでそれを探して乗るのですが、番号が連番ではないのはちょっと謎な感じです。車両の入り口ではアテンダントが個室の場所を教えてくれて、私たちの部屋は2階の車両最後尾ということでした。私が予約したのはSuperliner Roometteというもので、Roomに”ette“という「小さいもの」「もどき」「女性」などを表す接尾辞が付いている通り部屋と言うにはちょっと小さく、思っていた以上に狭いというのが第一印象でした。上位のSuperliner Bedroomというトイレ・シャワー付きの部屋とだいぶ迷ったものの$1400ほども違うので諦めたのですが、その差額はかなり大きいですし、座席車に比べれば雲泥の差がありますので良しとします。

Roometteは車両中央に通路があってその両側に個室があり、それぞれの中には大窓の横に前後向かい合わせに座席があり、寝る時にはその座席がベッドに変わり、もうひとつのベッドが頭上から降りてくるという形になっています。窓は中央に桟があり2枚に分かれていますが、それぞれ幅80cmほど、高さ60cmほどあり、見晴らしは保証されているので実際には窮屈な感じはあまりありませんでした。座席も大柄なアメリカ人も座れるサイズなのでだいぶゆとりがあり、日本の通勤電車なら2人分の幅かもしれません。

予想に反して列車は1分も違わず定刻通りに発車し、一路北西へと向かいます。踏切に差し掛かるたびに必ず警笛を鳴らすので、ひっきりなしに鳴っているのが落ち着かない感じですが、それもしばらくすると慣れてしまいました。個室寝台には食事が付いているので、しばらくすると食堂車から夕食の予約時間を聞きにきたので、昼食が早めの時間だったため夕食も一番早い5時でお願いしました。

個室内でくつろいでいると食事の時間がやってきたので食堂車へと向かいましたが、ここでちょっと辛いのが2人組の場合は必ず相席にされてしまうということです。社交的な人には問題ないでしょうが、残念ながら私は人見知りをするタイプなので挨拶と軽い自己紹介くらいでなかなか打ち解けるには至りません。食事の方はThe Amtrak Signature Steakというのを頼んでまずまずの美味しさだったのですが、寛げないせいでせっかくの味も3割引きといった感じです。楽しそうに会話が弾んでいる席もあるので、私たちと相席になった人達にも気の毒なのですが。

朝も早かったので、食事の後は早めにシャワーを浴びて寝ることにしました。Roometteの場合は共同のシャワー室が車両の1階に1つあるのでそれを利用します。ホテル並みにキレイというわけではありませんが、不潔な感じはないので比較的気持ちよく利用できました。なお、石鹸とタオルは置かれているものが利用できますが、シャンプーはありませんでした。その後アテンダントにベッドメイキングをお願いしましたが、既にセットされたものが上のベッドに用意されているので自分でも簡単にできるようなことでした。

疲れていたのか案外良く眠れましたが、起きてみるとどこかで1時間ほどの遅れが出ていました。景色の方はあまり代わり映えのしない田舎の風景でしたが、深い霧が降りていて視界が良くありません。朝食は予約無しで6時半からということなのでそれを待って食堂車に向かい、オムレツをいただきましたが、これは可もなく不可もなく、ただボリュームはたっぷりでした。昼食も同様に予約不要でしたが、空席がなかったのでウェイティングリストに載せてもらって放送で呼び出されるのを待つという形で、20分ほど待ったでしょうか。食べたのはAngus Steak Burgerで、パティは今ひとつでしたがトマトとレタス、タマネギの新鮮さで救われたような感じでした。

この日は延々と西へ向かってひた走るのですが、車窓からは果てしない牧草地に時々放牧された牛が見えるくらいで、全く変化がありません。牛の群れの中にはかなりの割合で仔牛が混じっており、列車に驚いて線路から離れる方向へと慌てて走る姿も見られました。夕食にはGrilled Salmonを頂いて、その後部屋へ戻った頃、この路線のハイライトたるロッキー山脈へとさしかかりました。しかし残念ながら、列車が遅れてしまっていたこともあって既に日は沈んでしまう頃で、風景を楽しむには遅すぎました。どうも逆方向の列車に乗った方が景色を楽しむには時間的に良かったようですが仕方ありません。辺りも真っ暗になってしまったので私も寝ることにしましたが、翌朝また山岳部へと進みました。ロッキー山脈は越えてワシントン州へは入っていましたが、明るい日差しを浴びて緑の中を走るところを見られたのは良かったです。

そうして長かった旅も結局出発からちょうど48時間ほど、丸々2日をかけて無事終わり、最後は海沿いをゆっくり走って最終目的地のシアトルKing Street Stationにたどり着きました。振り返ってみるとアクティビティのたくさんあるクルーズ船とはまた違い、ただただ時間を浪費しているのが贅沢なように感じられました。決して安価な交通手段ではないので客層も時間と金のある老人が中心で、ほとんど白人でした。車掌やアテンダント、ダイニングのスタッフなどクルーは皆フレンドリーで親切で、Amtrakで働くことに誇りを持っているようにも感じられ気持ちが良かったです。鉄道マニアの他はかなりの物好きでなければ日本からわざわざ乗りに行くということもないでしょうが、私にとっては良い経験になったと思います。ただ、PSPの充電器を持って行かなかった次男はかなり退屈はしたようですが、それでもそれなりに楽しむことはできたようです。

Unstoppable

これに近いことが現実に起こっていたとは。

今日は小学校のPTAの行事で妻子が出掛けてしまったのですが、私は昨日長男をサッカーの試合に連れて行ったため免除となったので、日曜日をひとりで過ごすことになりました。となると無為に時間を過ごすのが嫌いというか苦手な私は何をしようかと早速考えたのですが、一人の時こそすべきことは何か、といっても急にできることは限られていて、結局気分に任せて映画を見に行くことにしました。一昨日「ソーシャル・ネットワーク」を観たばかりですが、ここは贅沢に2作品も観てしまうことにして、まずは「アンストッパブル」です。

この作品は2001年に実際に起った事故を元に作られたものということですが、実際にあったことだけでもかなりドラマチックで、まさに映画化にうってつけの出来事と言えるでしょう。ただ、それも幸いにも犠牲者がなかったから言えることで、仮に何人かの死傷者を出していたとしたら被害者感情を考慮しなければならず、具体的に自己を連想させるような設定にはできなかったでしょう。

さて、実際の事故は置いておくとして、この映画の設定では事故の発端は作業員の怠慢とミスとが重なって起こってしまったものです。操車場で貨物列車の操車場で作業に当たっていた運転士が、ブレーキホースが接続されていないのに気付いていながら放置してしまったこと、目の前のポイントが正しく切り替わっていないのに気付いて低速走行中の機関車を降りポイントを切り替えに行ったこと、そしてその際にブレーキを適切に操作しなかったことです。このため機関車は運転士を残したまま加速を始め、無人のまま走り去ってしまったのでした。もちろん機関車にはいくつかの安全装置があったのですが、ブレーキホースが接続されていないことで無意味になってしまったのです。悪いことにこの列車の積荷は大量の燃料と引火性の有毒物質が積まれており、さらに行先の大都市には急カーブが待ち受けているという、これでもかと言わんばかりの設定です。

そしてこの映画、ほぼ最初から最後まで全編がクライマックスではないかというほど緊張感と迫力あるシーンの連続です。上映時間は98分と短めですが、それだけにコンパクトにギュッと詰まっていて、終わったあとで物足りなさを感じることはないのではないでしょうか。逆にこれ以上長いと虚脱感がありそうです。

暴走列車を停めることになったヒーローはDenzel Washington演じるベテラン運転手とChris Pineの新米車掌です。Denzelはいつもの彼らしい演技でどこかで見たような感じがしてしまうのですが、それもそのはず、この作品の監督はTony ScottでDenzelとは「デジャヴ」と「サブウェイ123 激突」に続いてのコンビなのでした。しかしこれらの2作品とも私は非常に気に入っていて、またこの「アンストッパブル」も期待以上に楽しむことができたので、きっとこのTony Scottという監督の作品が私好みということなのでしょう。これまであまり監督のカラーというのは意識していませんでしたが、これら3作品に共通する演出を考えてみると確かに私のツボにハマるもののような気がします。

ということで、よくある「暴走列車モノ」ではあるのですが、実際の事故を元にしているというだけあって実にリアリティのあるものになっていて、娯楽作品として非常に良く出来ていると言えるのではないでしょうか。ただ一つ気になったのは、機関車の前照灯のうち壊れてしまった1つの左右の位置が途中で変わってしまっていることですね…きっと単純なミスなのでしょうが、ひょっとしたら途中で気付いたものの作り直すには金が掛かり過ぎるということで見送られてしまったのでしょうか。だとするとこの事故の原因を作った作業員を責めることもできないような…