nTAGこれもまた新たな経験

今週フロリダ州オーランドで開催されていたFreescale Technology Forum(FTF)も正味3日の日程を終え、私もすぐに日本に帰らなければなりません。日常の業務を離れていろいろな勉強ができ、また新しい情報もいくつか得ることができ、有意義なものであったのではないかと思います。それが往復25万円の航空運賃を始めとする諸経費と、私が丸々一週間束縛されるということに見合うものであったのかはなかなか難しいものがありますが、できればまた来年以降も参加したいものです。正直なところ片道24時間の移動と時差ボケはかなり辛いものがありますが…

それはさておき、このFTFの現地受け付けで名札代わりに渡され、会期中ずっと首に掛けているように言われたのが”nTAG“というデバイスでした。なんでも会場周辺にいる限り無線で常に情報のやりとりをやっていて、ユーザ側にとっては随時アジェンダが更新され、参加セッションの管理、主催者からの連絡、参加者同士のメッセージのやりとり、名刺交換などができるということです。また同時に運営側にとってはこのほかに各参加者の所在の把握ができ、会場の混み具合やセッションの人気度をデータとして得ることができ、また参加者は各セッション受講時にその内容についてnTAGを使用した簡単なアンケートの回答を求められます。

去年の参加時は名札がICカードになっていて、私達は首からカードホルダを下げ、各セッションの受講時には部屋の入り口にいる係員にそのカードをいちいち渡してカードリーダで読ませていたので、一気に10年分ほどの技術の進歩が見られたような気がします。また受講アンケートの方は普通の紙の回答用紙だったのでこちらは大きな変化ですが、私も昨年の時点で紙資源の無駄が気になっていたので、これはいいことではないかと思います。それ以外の部分についてはさらなる付加価値ということになりますね。

このnTAG自体は実は最新のデバイスというわけでもなく数年前からあったもののようなので、首が疲れるほど重くはないもののちょっと大きくて、あまり凄いテクノロジーとは感じられません。またディスプレイのは解像度が低く3色の表示だったのではないかと思いますが、このあたりはきっと消費電力を考慮したものなのでしょう。ただ会期中にバッテリが切れてしまう人も多く、私も一回途中で替えてもらったのですが、その可能性については説明がなかったので、突然動きがおかしくなったときは壊れてしまったのかと思いました。

他の参加者にメッセージを送るには、その担当の係員に頼んでPCから入力してもらう必要があります。さすがに誰でも誰にでも送れるようになっているというとspam的なメッセージがやたらに送られてしまう可能性があるということなのでしょうか。私もパーティの際に楽しく過ごせたお礼のメッセージをJuanに送ってみましたが、相手の名前と会社名がわかっていれば問題がないようでした。

各自の情報はnTAGのウェブサイトから個人用のホームページで閲覧できるようになっていて、自分がどの時間帯にどこにいたか、誰と名刺交換をしたのか、どんなメッセージが届いているのか、というようなことを知ることができます。これは同じ情報が運営側にも掌握されているということなのでちょっと気味悪いような気もしますが、そこは信頼するしかないのでしょう。

ちなみにこの端末にはスピーカなどはないようだったのですが、バイブが付いていてメッセージの受信時にはその振動で伝えてくれるという機能が付いていました。首に吊り下げているものが振動して気付くものなのかと思われるかもしれませんが、実はボディが薄く軽いので全体が共振して音を出すようになっているのです。これが結構な曲者で、セッション受講中に主催者からのリマインダリ的なメッセージが一斉に送られると、静かな部屋のあちこちから一台ずつ微妙な時間差で「ビーッ」と鳴り、しばらく気が散ってしまうことになりました。

誰がどこにいたのか、というのは各プレゼンテーション会場に設置されている基地局と端末との通信により実現されているようです。会場は全部で40部屋以上に分かれていますので、それだけでもかなりの経費がかかっていることになりますね。人手でカードを読ませるよりも安上がりなのかと思いきや、実は係の人はちゃんといるのでその人達の仕事と受講者の手間が減っただけということなのですが、それは仕方がないのかという感じです。

ということで参加者は会期中いろいろお世話になったnTAGの端末も、そのまま持って帰ってね、というわけにはいかず、終了時にしっかり回収されることになります。基本的に技術者の集まりなので持って帰って遊んでみたいという人も少なからずいたのではないかと思いますが、それを漏らさず回収するためにこの端末と終了アンケート用紙を提出するとTシャツとSheryl CrowのCDをプレゼント、という物で釣る作戦できました。まあ、返却のレシートを渡されて2週間保管しろということだったので、返さずに帰ってしまうと結局あとで催促されることになるのでしょうが。

まあなかなか面白いnTAGだったのですが、これだけの規模のイベントだからこそ本領を発揮できるデバイスといえるでしょう。私はほかにカンファレンスなどに出席するような機会がないのでよくわからないのですが、ひょっとして特に珍しいものでもなかったりするのでしょうか。だとするとこんなに一生懸命書いてしまってちょっと恥ずかしいような気もしてしまいますが…