Milner's Deuce coupe古き佳きアメリカの青春

最近になって平均的な人よりも良く映画を観るようになったと思う私ですが、実は古典や名作と呼ばれるようなものも含め、ちょっと古めの作品はあまり見ていなかったりします。映画を語るならこれは当然観ておかなければおかしい、というようなものも知っているのはタイトルだけだったりするので、本当は偉そうに語る資格はありません。機会があれば観ていきたいという気持ちはあるのですが、どれから手を付けたらいいのかもわからないのできっかけが必要…というわけで、先日George Lucasの伝記を読んだところだったので、Lucasの出世作である「アメリカン・グラフィティ」を観てみることにしました。

アメリカン・グラフィティ
監督:ジョージ・ルーカス
ユニバーサル・ピクチャーズ・ジャパン (2006/04/01)
ISBN/ASIN:B000E6GB7Q

当時流行した音楽をBGMに多用してLucas本人の青春時代を映画にしたというこの作品の舞台は1962年の夏のサンフランシスコ郊外で、高校を卒業した主人公らがそれぞれの道に向かって旅立つ前夜一晩の出来事が描かれています。Mel’s Drive-Inというドライブイン・レストランを拠点として夜な夜な街道を「クルージング」する若者たちの車ではWolfman Jack Showという海賊ラジオ局の流す音楽とDJが流れています。

当時のアメリカの若者は本当にこういうことをしていたらしいのですが、「クルージング」といってもただ街の目抜き通りを往復して、その間に車の中から女の子に声を掛けて車に乗せたりするというだけのもののようです。まあそれだけで終わるのではないのでしょうが、いかにも娯楽のない時代らしいことです。といっても映画の舞台となった1962年頃にしても日本で公開された1974頃にしても、当時の日本ではそんな若い頃から自分の車を乗り回しているというようなことは考えられなかったでしょうから、「アメリカって凄いなあ」と映画を観た人たちは感じたのではないでしょうか。

ところで、出演したのはこの映画に出るまでは無名だった若者ばかりなのですが、Richard DreyfussRon HowardCharles Martin Smith、そしてHarrison Fordというこの映画を足がかりに大出世を果たした人ばかりです。Harrisonはこの作品が縁でスター・ウォーズのオーディションで相手役を務めることとなり、結局そのまま映画にも出演して人気を得て、さらにレイダースでついに主役となって不動の地位を得たわけですから、彼もLucasには一生頭が上がらないのではないでしょうか。

特にTHX 1138を観たあとだっただけに、この作品を観るまではLucasが青春コメディというのはどうなのかと思っていましたが、やはり単なるコメディではない独特の雰囲気を持ったものでありつつ、音楽を満載して観客を楽しませることを大切にした作品に仕上がっていました。

ちなみにこの作品の制作費は125万ドルに抑えられていたのですが、興行収入は11500万ドルにも上ったということで「興行的に最も成功した映画」とも言われているそうですが、この時の収益を元にスター・ウォーズの製作に関わる権利をLucasが得たことにより、Lucasの思い描いたものに近いスター・ウォーズが生まれたわけで、まさにこの作品なくしてスター・ウォーズはなかったとも言えるのです。