永らくチャンピオンの座に留まっていたミハエル・シューマッハをその座から引きずり下ろし、史上最年少でアロンソが新しいチャンピオンとなった、まさに新時代の幕開けとなったFormula 1 2005年シーズンも、ついにその最終戦となる中国GPを終えてしまいました。今回もこの一年を象徴するような一戦でしたが、波乱に満ちた一戦でもありました。

まずはフリー走行初日からバトンが食あたりということもありましたが、なんとか予選・決勝には出場できる程度に回復したようで何よりでした。予選はルノーの2台がフロントローを押さえ、ライコネン、バトン、モントーヤ、ミハエルと続きますが、コンストラクターズランキングで2位マクラレンに対して2ポイントのリードを持つルノーにとっては、タイトル獲得にかなり優位なポジションを確保することができました。一方マクラレンにとっては2台が揃ってルノーの前に出ない限り栄冠を手にすることはできないというわけで、圧倒的に不利な状況です。

さて、決勝ですが、ダミーグリッドに着く以前に前チャンピオンを不運が襲います。急にコースを変えたミハエルにアルバースが接触し、2人ともTカーに乗り換えてピットレーンスタートということになってしまい、ミハエルはせっかくの予選6番手のポジションをフイにしてしまうことになりました。去年までのミハエルにはあり得なかったミスですが、調子の悪い時には何もかもがうまく行かないということのようです。

他にもカーティケヤンがフォーメーションラップ後ピットインしたために空席の目立つスターティンググリッドでしたが、スタートはフィジケラが後続のライコネンやモントーヤをうまく抑えてアロンソの独走状態を作り出しました。後方では琢磨がロケットスタートを決めて5台抜き…かに見えましたが、ジャンピングスタートの判定が下されてドライブスルーペナルティを科されてしまい、一気に20位に落ちることになってしまいました。

その後なぜか縁石上に落ちていた排水溝の蓋をモントーヤが踏んでしまいタイヤ交換を強いられることになったため、これを取り除くためにセーフティーカーが導入され、アロンソがせっかく築いた2位以下とのスペースは無駄になってしまいました。このセーフティーカー先導中の周回ではあろうことがミハエルが単独でスピンしてコースアウト、サンドトラップにはまってリタイアということになってしまい、かつてのチャンピオンには全く辛い仕打ちにも見えました。また、結局モントーヤはサスペンションまでダメージを食らってしまっていたため、セーフティーカーの解除直後にガレージに消えることになってしまい、タイトル争いはこの時点で確定してしまったかのように見えました。

さらにその後、カーティケヤンが単独で大クラッシュし、コース上に盛大に破片を撒き散らした上にマシンが炎上したため、今日2回目のセーフティーカーが導入されることになり、アロンソのリードはまた一片に縮められてしまいました。このセーフティーカーの解除直後には琢磨がトランスミッションのトラブルでスローダウン、リタイヤということになってしまい、BAR Hondaでのシーズンをここで終えることになってしまいました。こんな終わり方も今年の琢磨の運勢を象徴しているかのようです。

レース終盤は逃げるアロンソをライコネンが必死に追う展開となりましたが、2回目のセーフティーカー導入時にフィジケラがピット入口で必要以上に減速して後続のライコネンらを妨害したとして審議対象になったことで「ひょっとして…」と思わされることになりました。結局はドライブスルーペナルティとなり、しかもピットレーン通過のタイミングをうまく測ったことでダメージを最小に抑えることができました。

最終的にはアロンソがそのまま逃げ切ってポール・トゥ・ウィンの7勝目、優勝回数でライコネンに並んだことで正真正銘のチャンピオンとなりました。これまではライコネンの方が優勝回数が多かったため、従来のような1位と2位以下の差が大きいポイント制度であればチャンピオンはアロンソではなかったのではないかなどとも一部では言われていました。ライコネンは一歩及ばず2位、3位にはラルフが入ってトヨタの存在感を最後でも示すことになり、来季に繋がるよい結果で終わることができました。

終わってみれば今年は最初から終わりまでルノーの快進撃が続き、そこに速さは間違いないが安定性で劣るマクラレンが追いすがる展開で、去年の覇者フェラーリや躍進したBAR Hondaが没落する一方でトヨタが4強に入る好成績を収めました。来年はまた大きくレギュレーションが変更され、またチームの売却や新規参入もあって構成も変わるため、今年の結果から来年を占うのは難しいのですが、それがまた楽しみを大きくしてくれるようにも思えます。

まだ琢磨のシートが確定していないことで不安は残りますが、報道されるように11番目のチームで、来年もまたアグレッシブなドライブが見られることを楽しみにしていたいと思います。今年の失敗、不調から学習し、一回り大きく逞しくなった琢磨の走りを速く見たいと今からうずうずしてしまいます。まずはちょうど一月後と言われる発表ですね。

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