24 Heures du Mans今年はすっかりサッカーのワールドカップの陰に隠れてしまい、また日本メーカーのワークス参戦もないため日本では全く盛り上がることなくひっそりと開催されていた伝統の「ル・マン24時間レース」ですが、今年はAudi R10が総合優勝を飾る結果となりました。

V12 TDIこのAudi R10の特徴は何といってもそのエンジンが直噴ディーゼル「TDI」の5.5l V12ツインターボであるということで、ディーゼルエンジンによる総合優勝は史上初となるようです。出力650HPというのはさほど高い数字ではないように感じますが、トルク1100Nmというのは文字通り桁違いという感じです。しかもそのパワーバンドは3000〜5000rpmにあるといいますから、レーシングエンジンとしては極超低回転型の非常に扱いやすいエンジンなのではないでしょうか。

ディーゼルエンジンの特徴としては低回転高トルク型であるということのほかに、ポンピングロスがないことにより低燃費であるということもあげられますが、ル・マンのような耐久レースの場合にもこれが非常に有利に働くことになったようです。他車よりも給油間隔を2割ほど長く取ることができたおかげで、給油のためのタイムロスを減らすことができたというわけです。

こうもいいことばかりであるとエンジンのレギュレーションがもっと緩やかであったらF1も全てディーゼルエンジンになってしまいそうなものですが、FIAがF1をヨーロッパのものだと考えているのであれば、ヨーロッパでディーゼルが主流となっている今、レギュレーションの改正もあながちないとは言い切れません。今のところはアジア重視の方針のようなのでたちまちはないでしょうが、ホンダやトヨタが表彰台の常連になるような時が来たら心変わりもあるかもしれません。

今回AudiがTDIで優勝したということは、ヨーロッパでのディーゼルエンジンの割合が一層高くなることにも繋がるでしょうが、三菱自動車が三菱重工と組んでヨーロッパ向けにディーゼルエンジンの開発を始めるという発表もあり、どうしてヨーロッパだけなのか、と感じるようになってきました。NOxが多いなど排出ガスの問題はあるのでディーゼルが環境に優しいというのも一つの思い込みではあるのですが、燃費がいいというのは明らかな事実です。日本では粗悪燃料の違法トラックのせいで「ディーゼル=黒煙」というイメージが固定化してしまっていますが、ディーゼル用の触媒も開発された今、日本でもそろそろ見直されてもいいのではないでしょうか。
Audi R10

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