理想科学工業こんな日が来ると十年前には想像できませんでしたが…

日本人にとって年末年始に欠かせないものの一つが「年賀状」ですが、電子メールの普及によりメールで済ます人なども出てきたことなどもあり、郵便葉書で投函する人は減少傾向にあるということですが、それでも昨年のお年玉付郵便葉書総発行枚数は40億2,104.8万枚にも上るということですから、信書配達を独占する日本郵便にとっては一年で一番の稼ぎ時です。

また、年賀葉書の表書きも最近はPCのいわゆる「年賀状ソフト」を使い、プリンターで印刷するという人が多いのではないでしょうか。私も数年前からはPCでデザインしてプリンターで印刷するようになりましたが、出来合いのデザインではなくオリジナルのものを考えて作るというのは最低限のラインとして死守したいと思っています。宛名書きの方はついに昨年から印刷にしてしまいましたので…

それでは、プリンターを使うようになる前はどうしていたのかといえば、当時は年賀状印刷の定番であった理想科学工業プリントゴッコを使っていました。シルクスクリーンを簡単に使えるようにしたもので、原稿をフラッシュランプでスクリーンに焼き付け、その後は適当にインクを載せておけばそれなりにきれいに印刷ができてしまうというお手軽さで、まさに一世を風靡していたものです。私はPCでデザインを作成し、それをプリンターで印刷したものを原稿とし、葉書への印刷にプリントゴッコを使用していました。当時はまだプリンターのカラー印刷の品質は鮮やかさに欠け、またプリント速度も私の我慢できるものではなかったのです。

しかし、衰えるようには見えなかった栄華もPCの普及と技術の進歩によって急速に衰退し、ついに今日、販売終了が発表されることになりました。むしろ「まだ売っていたのか」という驚きがないでもありませんが、これまでサポートを続けていたというのはかなり良心的、というよりかつての独占企業として果たすべき責任を果たしたというところでしょうか。また、消耗品はまだ継続して販売するということですから、まだ終わったというわけではないようです。

1977年の発売以来30余年の長きにわたって親しまれてきたプリントゴッコですが、それ以前は木版画やゴム版画といった本当の手作りだったものが一気にお手軽なものになってしまい、功罪半ばといったところもあるかと思います。しかしそれでも日本の年賀状文化を支えてきたのは間違いのないことで、讃えられるべきでしょう。年賀状ソフト任せで出来合いのデザインをちょっとアレンジするだけだったり、ましてやメールだけで済ませてしまったりするよりは遙かに「手作り」と言えます。

年賀状自体が無駄で無意味、郵便局を儲けさせるだけだと批判的な人もいるようですが、年賀状で辛うじて繋がっていた知人に急に頼り頼られることなどもあったりするものですから、日本の伝統的コミュニケーション手段としては捨てたものではないと私は思います。まあ確かに年の瀬には多少面倒な気にもなりますけどね…