シン・ゴジラ大人向けです。

日本人の平均より映画館に足を運んでいると思う私ですが、もっぱら観るのはいわゆる洋画、ハリウッド作品がほとんどで、邦画を観ることはほとんどありません。それは別に邦画を見下しているというようなわけではなく、変に身近に感じてしまって現実とのズレを感じてしまうとか、画面のこちら側、つまりカメラの後ろがどうなっているかが想像されてしまうからとかいうようなことではないかと思っています。また、市場の大きさがまったく違うために製作予算もまさしく桁違いであり、邦画の場合にはたまに粗が見えてしまうということもあるかもしれません。とはいえ、近年のCG技術の進歩に伴う低コスト化のおかげで、予算の違いによる映像への影響はそれほど明らかなものではなくなってきているのではないでしょうか。

それはともかく、ゴジラシリーズの29作目となる「シン・ゴジラ」にももともとほとんど関心がなかったのですが、まず予告を見て「ちょっと面白いかもしれない」と興味を持ち、そして公開されてからのSNS等での評判を見ているととても良さそうに感じたので、たまには邦画もいいかもしれないと観てみることにしました。なお、先日「シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ」を一緒に観たMarvel好きのO君がこれから観たい映画としてこの作品を挙げていたのでもう観たかどうかを聞いてみたところ、彼もまだだということだったので昨日の仕事の後に二人で行ってきました。
ゴジラ
SNSでの雰囲気から、予備知識は持たない方が楽しめそうだったので私もあえて何も調べずに臨みましたが、知っていても困らない情報としては「これは怪獣映画ではなく政治ドラマである」ということが言えると思います。怪獣映画を期待して観に行くと後悔する可能性がありますが、現実にゴジラが生まれ、東京に上陸したとしたら日本政府はどう対応するだろうか、日本の社会がどうなるだろうか、ということをリアルに描き出そうとした作品である、というのが面白さをスポイルしない範囲で言えることでしょう。まあ「東京に上陸」というのはネタバレかもしれませんが、それはお約束なのでいいですよね。

作品自体はとても面白かったのですが、ちょっと気になってしまったのは石原さとみ演じるKayoko Ann Pattersonというのが日系3世のアメリカ人という設定なのですが、カタカナ語を英語の発音にしてそれっぽくしてはいるものの、やはり英語のセリフには無理があってどう聞いても日本人の英語なのです。むしろ総理大臣とアメリカ大統領とのホットラインで通訳をする官僚役の人の発音の方が上手くて、少々残念でした。美貌と演技力と英語力とを併せ持つという人はなかなかいないのかもしれませんが、今後もこういう役が度々あるとすれば、俳優も英語力で仕事がもらえるようになったりはしないのでしょうかね。普通の人は気にしないので無理でしょうか。

ゴジラといえば2014年のハリウッド2作目「ゴジラ」と、その後にシリーズの原点である1954年版「ゴジラ」も観ましたが、この作品はそのどちらともかなり異なるものになっていました。そして、これらの中では今回の「シン・ゴジラ」が一番好みだったと思います。ハリウッド版もあれはあれでハリウッドが作るとこうなる、ということでは素晴らしかったと思うのですが、やはり餅は餅屋ということでしょうか。ちなみに今回の作品は「円谷英二の生まれなかった世界」だそうで、怪獣という言葉は使われずに「巨大不明生物」と呼ばれていますが、これは製作時に実際の官僚が発言した言葉から取られたとのことです。こういうところからもリアリティが深まっているのでしょうね。