Godzilla (某国からのクレームで取り下げられたポスター)これならファンも納得できるのでは。

近年のハリウッド映画はヒット作の続編やシリーズ物、ヒット小説やコミックの映画化、そして過去のヒット作のリメイクというのが多く、特に大作では本当のオリジナル作品というのが少なくなっているのではないかという気がします。面白ければそれでもいいのかもしれませんが、そういった作品ではマンネリズムなのか何かが足りないようで、オリジナル作品ほどの感動を得るのは難しくないでしょうか。

今回観た「ゴジラ」もストーリーとしてはオリジナルですが、往年の怪獣映画「ゴジラ」からの流れを汲むシリーズのハリウッド版リメイクということになります。それではやはり何かが足りないと感じたのかというと、確かに登場する怪獣ゴジラがどんな風体なのかはだいたいわかっているのでそこであっということはありませんでしたが、映像技術の進歩のおかげもあって初登場から60年を経ても一切陳腐さは感じませんでした。むしろ、以前公開された1998年版「GODZILLA」のようにこれまでのファンをがっかりさせないように、細心の注意が払われたのではないかという印象もあり、期待をはるかに超えて楽しむことができました。

とはいえ、私自身ゴジラシリーズは小学生の時にゴジラとモスラとあと何かが登場する作品を観た記憶があるくらいでそれほど馴染みがあるわけではなく、しかもいま確認してみるとその頃(1970年代後半から80年代前半)には新しい作品は作られておらず、観たのがどの作品なのかもわからない始末です。
Godzilla - Aaron Taylor-Johnson as Ford Brody
本作品の物語は日本のジャンジラというところにある原子力発電所から始まります。日本人には「ジャンジラ」なんてとても日本語とは思えず、日本人のスタッフやキャストも少なからずいるのにどうにもならなかったのかという気もしますが、そのあたりは苦笑いするくらいにしておきましょう。下手に実在する地名と一致してしまうと福島第一原子力発電所事故と重ねあわせてしまう人がいたりして厄介なのかもしれません。またここは原発があるにもかかわらず高層ビルも立つ結構な大都市になっているのが現実的ではありません。また一方で15年前という設定なのに昭和40年頃かというようなレトロな看板があり、なんとも違和感がありますが、これは昔のゴジラ映画を参考にしてしまったせいなのかもしれないと思っています。

本作の主役のFord Brody大尉はKick-AssAaron Taylor-Johnsonが演じていますが、凛々しい役柄なので「どこかで見たような気はするけど…」と私もすぐには気づきませんでした。またFordの妻Elle役はElizabeth Olsenという可愛らしい女性が演じていますが、この二人は「キャプテン・アメリカ/ウィンター・ソルジャー」や来年公開予定の「アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン」ではQuicksilver/Pietro MaximoffScarlet Witch/Wanda Maximoffという双子の姉妹を演じているというのも何かの縁なのでしょうか。
Godzilla - Ken Watanabe as Ishiro Serizawa
また、重要な脇役である芹沢博士を渡辺謙が演じています。ハリウッド映画では日本人男優は渡辺謙と真田広之しかいないのかというくらいこの二人ばかりですが、ハリウッドレベルの実力があるのがこの二人だけなのか、あるいは他の俳優が出て行きたがらないのかどちらなのでしょう。また、私は「また渡辺謙か」という感じで見てしまいますが、外国人がどう思っているのかは興味のあるところです。なお、この芹沢博士のファーストネームはオリジナルでは「大助」ですが、この作品では「イシロー」となっています。これはゴジラの生みの親である本多猪四郎監督に捧げられたものなのでしょう。

ゴジラのデザインは1998年版では散々なものでしたが、今回はゴジラを知っている人にもまったく違和感なく、さらに迫力を増した姿になっているのではないかと思います。しかしさすがに現代の技術により、着ぐるみではなくモーションキャプチャーによるCG映像となっており、すっかりモーションアクターの第一人者になってしまったAndy Serkisによる演技となっています。なお、ゴジラの姿は恐竜とゴリラのハイブリッドのような、非常にオリジナリティのある完成したものに見えますが、この形は着ぐるみであることによる制約の上に生まれたものなのでしょうね。しかし特に何に似ているでもなく、知っている人なら誰にでもゴジラと認識できるデザインは素晴らしいものだと思います。

私はこの作品を中3の長男と観に行ったのですが、普段冷めている彼が翌日になっても「面白かった」というほどなので、おそらく多くの人が楽しめる作品になっていると思います。きっと従来からのゴジラファンにも、名前でしかゴジラを知らない新しい世代の人にも受け入れられる、ゴジラシリーズの正常進化版、正統な後継作として認められるのではないでしょうか。私も大変楽しめましたし、無事に倒した時には場内で大きな拍手が上がっていましたので、アメリカ人にも受けているのは間違いないでしょう。日本の映画館では拍手なんて顰蹙ものですが、こちらでは一つのバロメータですね。