Déjà Vu「本当は一度も体験したことがないのに、なぜか同じことを既に体験したことがあるように感じる」という不思議な感覚「既視感」をフランス語の「すでに見た」という意味の”Déjà vu“(デジャヴ)と言うわけですが、私も数ヶ月から半年に一度ほどこの既視感を感じることがあります。「統合失調症の発病の初期や、側頭葉癲癇の症状として多く現れることがある」などと言われると大丈夫だろうかという気もしてきますが、実に不思議なものです。既に体験したことのように感じるものの先のことはわからないというのがポイントで、実際にはその「体験したという記憶」自体がその場で作り上げられた偽の記憶ということのようですが、本当のところはどういうものでしょうか。

ということで、昨晩はこれをタイトルにした映画「デジャヴ」を観に行ってきました。ストーリー自体は既視感とは直接関係がないのですが、実際に映画を観てみればなかなか上手いタイトルだと感じられるのではないでしょうか。

Mardi Grasの日のNew Orleansで、祭気分の乗客を満載したフェリーが何物かに爆破され、500人あまりの犠牲者を出す大惨事となる、というところから物語が始まります。この現場から上流側に女性の焼死体が上がったことに疑問を持ったATF(アルコールたばこ火器爆発物取締局)の捜査官、Denzel Washington演じるDoug Carlinは直感を働かせ捜査を始めますが、このDougの感性に目を付けたFBIの特別チームは彼をプロジェクトに引き込み、特殊な装置を使って捜査を進めようとします。この装置というのが「4日半前の映像をあらゆる角度から見ることができる」というものなのですが、巻き戻しや早送りはできず、時間の進み方は実際の時間の経過と同じスピードという制約があるところが話を面白くしています。

FBIと対等に捜査を進めるATFというのは一体どういう組織なのかと思いましたが、映画「アンタッチャブル」の主人公Eliot Nessが属していた財務省の組織をルーツとする連邦政府の組織で、銃砲や爆発物の取り締まり権限を持っているということのようです。日本ではほとんど警察の管轄にあるようなことがアメリカではいくつもの組織に分かれていて非常に複雑に感じますね。

この映画のストーリーはSF的なものになってはいるのですが、科学的な理屈付けの部分はかなり甘く、SFとしての出来はあまりいいとは言えないような気がします。しかし、最後までハラハラドキドキが連続する展開と大きなどんでん返しとがあり、サスペンス的な部分でとても楽しむことができました。非常に良くできた脚本に大満足の作品で、今のところ私が見た中では今年一番の面白さと言っていいのではないかと思います。

それにしてもこの作品、ちょっと説明しようとするとすぐにネタバレになってしまいそうで、どこが面白いのかというようなことも迂闊に言うことができないのが難しいところです。「ちょっと物足りないけどもう終わるのかな」と思ったところが実はまだ中盤で、そこから一気にクライマックスまでたたみかけるような展開が…とだけ言っておきましょうか。まあとにかく面白かったので、SFに拒絶反応のないサスペンス好きな方にはぜひ観ていただきたいと思います。実は私は一カ所理解できないところがあったので、きっとDVDも買ってサスペンス好きな妻と一緒に観ることになるでしょう。

ちなみに昨日観たのは日曜のレイトショーといういつも空いている時間帯ではあったのですが、開園1分前まで私一人でぽつんと劇場内に座っていたときには「私一人のために上映とは何と贅沢な」と思う反面、心細くもあるような状態でした。その後、間際になってカップルが3組ほど次々とやってきたのでホッとするやらガッカリするやらという感じでしたが、さすがにたった一人ということはこれまでにも一度もありませんね。それでも数人では採算なんて採れるはずもないわけですが。

デジャヴ
デジャヴ

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