Apple Inc.日本を変えるには外圧に頼るしかないのか…

現在、音楽用CD-R、録画用DVD-RやMDなどに「私的録音録画補償金」というものが課せられていて、これらのメディアを購入する人が支払う金額のうちのいくらかが著作権者に支払われることになっています。この根拠とされているのは「デジタルメディアでは音質・画質の劣化無くオリジナルと同質の複製が可能であり、こうした複製の場合は著作権者が本来得るべき利益が失われる」ということで、これを補償するために設けられている制度です。

最近、この制度の適用範囲を拡大してiPodなどのデジタルオーディオプレイヤーにも適用しようとする動きがあったのですが、これについて政府が募集したパブリックコメントに対してAppleがかなり激しい調子で文化庁を非難する意見(PDF)を提出していることがわかりました。詳しくはコメント自体やCNETの記事を読んでいただければと思いますが、

科学的且つ客観的証拠に基づかない理由に依る私的録音録画補償金制度は即時撤廃すべきである。

という結論もさることながら

文化庁著作権課に依る一方的な行政運営には理解不能である。徒に著作権者団体の意見のみを汲取り消費者、機器メーカーの立場は無視し続けている。アップル社を私的録音録画小委員会から閉め出し、欠席裁判で物事も決める閉鎖的な体質を持つ文化庁の典型的な隠蔽体質を良く表している。平成19 年3 月27 日、文化審議会 著作権分科会私的録音録画小委員会にても多くの小委員会委員が補償金制度の必要性の根幹の議論提示をしたにも関わらず、作為的に「私的録音録画問題に関する検討の進め方(案)」から削除するなど鼻から「結論ありき」の審議会運営をする著作権事務局には真摯な姿勢は微塵も感じられず、もはや公平公正な著作権行政を運営する適切な省庁とは言い難く、速やかに著作権行政を他の省庁に移管することを強く望む。

という総括はかなり激しい調子でかなりのインパクトがあります。日本の中央省庁に対してここまで強い調子の文書をぶつけることのできる会社は他にあるのでしょうか?

そもそもiPodで音楽を聴く人はCDなどを購入した時点で既に著作権料を支払っていて、iPodにコピーするという行為は音楽を聴くためにCDプレイヤーにCDをセットするのと感覚的には何ら変わりがないはずで、コピーとは言っても「複製」という意識はないのではないでしょうか。またiTunes Storeなどで購入した人にとってはなおさらのことで、iPodで聴くことを前提に購入しているわけですから、その金額に含まれているはずの著作権料はいったい何のためのものなのか、納得できるものではありません。

Appleが掲げる「5つの理由」のうちにはいささか手前味噌的なものもありますが、こうして利用者の声も大きな声で代弁してもらえると嬉しいもので、私は「よくぞ言ってくれた」と言いたいところです。もちろんAppleにとっては自社の利益を守るためのものなのは間違いありませんが、裏で根回しに走られるよりもはるかに良い印象を持ってしまいます。それもまた作戦のうちなのかもしれませんが…まあ今回はそれでもいいのではないでしょうか。だって、どう考えたっておかしいですよね?