SFというにはあまりに現実的

Tom Clancyといえばベストセラーとなった小説「レッド・オクトーバーを追え」であまりにも有名な作家ですが、この他にもこの「ジャック・ライアン・シリーズ」ではいくつもの作品が映画化されています。先日図書館に行っていつものように英米文学の棚で本を物色していると、このTom ClancyとSteve Pieczenikの共著である「ネットフォース・エクスプローラーズ 陰謀のゲーム」という作品を見つけたので、Tom Clancyの本ならまあ間違いはないだろうと借りてみました。

ネットフォース エクスプローラーズ―陰謀のゲーム
著:トム クランシー , 他
アスペクト (2001/03)
ISBN/ASIN:4757208235

しかし、この作品は予想とは全く違う、かなり軽いものでした。まあ装丁から想像はできることではあるのですが、おそらくターゲットは20代以下の若者なのではないでしょうか。ページ数も300ページ程度ですし、スラスラと読めてしまうのであっという間に終わってしまいました。

それはそれとして、この小説の主な舞台となっているのはなんとネットゲームの中の世界です。ただし2025年という設定なので現代のネットゲームとは違い、五感を直結して完全に現実的なものとして感じることができる世界のようなので、小説の舞台としてもかなり現実的です。中世ヨーロッパをモデルにしたゲームの世界のようですが、登場人物がそれぞれなりきっていることと、いわゆるNPCもプレイヤーと区別がつかないほど知性的な言動をするようなので、まるで本当に中世を舞台にした小説のようです。

主人公たちはFBIのネット犯罪専門部隊「ネットフォース」の年少部隊「エクスプローラーズ」に属する学生で、このネットゲームの世界での捜査で活躍する、という話なのですが、この小説のようにネットゲームでのトラブルから現実世界での犯罪に至るというのは現代でも実際に似たようなことが起こっているのではないでしょうか。いつだったかもRMTでのトラブルが事件に発展したというニュースがあったかと思います。そういうことを思いながら読んでいると全く現実的な話に思えてきて、未来の出来事を描いているSF作品なのだということを忘れてしまいそうになりました。

ただ、実はこの事件にも裏があって、何やら大きな組織が黒幕として存在するようなことが最初と最後にほのめかされているのですが、この作品を読んだだけではそれが何なのかさっぱりわかりません。シリーズを通して読んでいくとわかってくるのでしょうが、残念ながら図書館にはこの続編はなかったようです。このままなんだかわからないままでいるのも何とも気持ちが悪いのですが、買ってまで読むほどではないような気もしますし…まあそのうち忘れてしまうでしょうか。