Super Aguri F1 Team夢をありがとう

ホンダトヨタの不甲斐ない戦績やドロドロした政治問題のせいで、私はF1に対して徐々に関心を失ってしまっていたのですが、久しぶりにF1に関することを書くのがこんな内容になってしまうのはとても悲しいことです。

ホンダがドライバーの扱いに失敗して結果的に佐藤琢磨がシートを失ったのをきっかけに2006年シーズンからF1選手権に参戦することとなったSuper Aguri F1 Teamが、資金難を理由についに選手権から撤退することを発表しました。「日本人による日本人のための日本のチーム」として発足したSAF1ですが、日本でのモータースポーツの地位の低さもあってスポンサーまで日本企業のみで固めることはできず、しかしながら日本の色が濃すぎて外国企業はスポンサーにつきたがらないのではないかと思われ、当初から資金繰りの厳しさをうかがわせてきました。発表にもある通り、決定的だったのは昨年のSS Unitedの契約不履行で、この事件以来綱渡りの運営を続けてきたのがついに事切れた、というところのようです。

今週末はトルコGPが開催されることになっており、各チームの機材がトランスポーターに載って送り込まれているのですが、SAF1のトランスポーターがサーキットへの立ち入りを拒まれたというのがニュースになっていました。その理由がホンダF1チームのCEOであるNick FryがSAF1のトルコGP欠場を伝えたためとされていることから、Nick Fryやホンダが悪者扱いされている節もありますが、ホンダ自体はSAF1最大の支援者であり、これまで経済的・技術的に多大なサポートを続けていました。しかしSAF1がチームとして自立するためにはホンダ以外に十分に力のあるスポンサーの存在が必要不可欠であり、ホンダがこれ以上の支援はできないと判断すればSAF1自体が継続できないというのも仕方のないことです。ホンダチーム自体が十分な戦果を得られていない状況ですから、ここでホンダを責めるのは筋違いというものでしょう。(2008-05-07 追記: ちょっと誤解していましたが、SAF1を支援していたのはあくまで本田技研本体であって、Nick Fry率いるホンダチームではなかったのですね。となると確かにNick Fryがいちいち口を挟む理由がわからなくなります。)

ここで心配になるのがドライバー、特に佐藤琢磨の去就です。マシンの調子が良かったBARホンダ時代には日本人としてかつてない活躍を見せ、日本のF1人気の再燃に一役買ったのは間違いありませんが、チームの迷走に巻き込まれてここ数年は目立った成績を残せていません。それでも時にマシンの性能を100%以上引き出してキラリと光るものを見せてくれるので日本人以外のファンも少なくないようですから、ぜひともどこかのチームでシートを獲得して欲しいものですが、強力なスポンサーがついているのでなければ数に限りのあるシートを得るのは難しいかもしれません。

それにしてもやはりF1というのは他のカテゴリーとは比べものにならないほど金のかかるものなのですね。鈴木亜久里氏はARTA Projectとして国内外の複数のカテゴリーに参戦していますが、その経験を持ってしてもどうにもならないということはまさに桁違いなのでしょう。長年参戦しているWilliamsなどはプライベートチームというよりも既に専門企業のようなもので、別格なのでしょうか。

以前からF1はワークスチーム一色となるのを嫌いプライベートチームの参入を促すために低コスト化を促進していますが、それでも不十分、というよりも金を掛けるところはいくらでもあるので差は縮まないということなのでしょう。自動車メーカーが幅を利かせるのがいやなのであればメーカーにとって魅力のないものにするしかないのでしょうが、それでF1自体の魅力が損なわれてしまっては元も子もないわけで、なかなか決定的な手は見つかりそうにありませんね…