虫眼鏡L’homme n’est qu’un roseau, le plus faible de la nature, mais c’est un roseau pensant. — Blaise Pascal

この一月ほどの間にGoogle Japan自らによるpay-per-post (有料リンク) が明るみに出てgoogle.co.jpのページランクが下げられたり、フランスのデータセンターで行われたメンテナンスの影響でGmailが利用できなくなったりとここへ来て散々なGoogleですが、中でも世界中に最も大きな影響を与えたのは1月31日の深夜、1時間弱の間全ての検索結果に「このサイトはコンピュータに損害を与える可能性があります。」と表示されてしまったという障害でしょう。

私もこの時Googleを利用していて「アレ?」と思いつつ、最初は自分が検索したのがMicrosoftのサイト内だったので何かの嫌がらせかと思ってしまったのですが、他の何を検索しても、何番目の結果も同様な表示になるのでようやく気付きました。この状態では検索結果をクリックしてもそのまま目的のウェブページにはアクセスできないのでとても不便に感じたのですが、やはり世界中の誰もが同じように感じたのか、この障害の間のあるサイトへのアクセスが1/10になってしまったという報告もあり、いかに皆がGoogleに依存しているかということが明らかになったとも言えるようです。

まあ日本ではGoogleよりもYahoo!のシェアの方がまだ高いそうですから、ここまでの影響はなかったのではないかとも思いますが、人々の検索への依存度合いはますます高まるばかりでしょう。学生のレポートや論文などはかなりの割合で検索結果のコピー&ペーストになってしまっているというような話もありますが、しかし何と言われてもGoogleにより調べ物が飛躍的に便利になってしまったのは事実です。ただ、そんな状況に対し「それでいいのか」というところから書かれた藤原智美氏の「検索バカ」という本を見つけてやはり気になったので読んでみました。

検索バカ (朝日新書)
著:藤原 智美
朝日新聞出版 (2008/10/10)
ISBN/ASIN:4022732407

「何でも検索すればすぐに答えがわかってしまう」というのが検索の便利なところではあるのですが、この本では実はそれ自体が問題の大元であるとされています。「検索すればわかってしまう」となると考えることをやめてしまう、答えにたどり着かなければ意味がないと思ってしまう、という冒頭のあたりは確かになるほどと共感を憶える内容です。ただ、「もうちょっと考えろよ…」というのは私が15年ほど前から常々感じていたことなので今に始まったことではないのかもしれませんが、私自身が何となく「考えなくなってしまっているな」とは感じているところでした。

その後の展開はなぜか「空気を読む」ということの問題に論点がすり替わっているのですが、この「空気を読む」というのは私の嫌いな言葉なので内容自体はこれもまた同意できます。「空気を読む」というとなんだかそれが能力のような感じに聞こえてしまいますが、それが能力と捉えられるのは特定の分野だけで、言葉を換えれば「場の雰囲気に流される」ということですから、決して褒められることではないでしょう。他人の顔色を窺いながら過ごすなんていうことは私はまっぴらです。

最終的な結論としては「自分で考えろ」ということを言っているようなのですが、それもまた当たり前のことですね。考えることをやめてしまったら人間としての存在意義が揺らいでしまいます。そこへ導くまでに「検索への依存」から始まり「空気を読む」を経由しているところが少々ユニークですが、全体的に徒然なるままに述べられているような感じがあって少々まとまりに欠けているのが残念です。まあ私も楽をせず色々考えるようにしないと偉そうなことを言っていられなくなるので気を付けなければいけない、と気を引き締めることはできました。