Cosmic Motors格好良さは理屈じゃない。

基本的に本というものは好きな私ですが、その好きな本も全体的に大きく2つに分けることができるような気がします。一つは読んでいる時が楽しくて次々読みたくなるような本で、自分で買わなくても図書館で借りられればそれで満足できるようなタイプです。大抵の小説や実用書、ビジネス書などはこのタイプになるでしょう。

もう一つは所有していること自体に喜びを感じるような本で、買った時点で満足してしまい、ほとんど読まずにそのまま本棚にしまわれてしまうことさえあるタイプです。これは本という形をしていてもコレクションの対象になっているということなのでしょうが、このような本が少なからず私の本棚には存在します。スター・ウォーズ関係のものや一部の技術書がこれに含まれてしまうかもしれません。その本には申し訳ないような気さえしてしまいますが…

最近色々なところで紹介されていたのでご存じの方も多いかと思いますが、Daniel Simon氏のCosmic Motorsという本は間違いなくこの後者に入ってしまうのですが、買ってみて後悔のない素晴らしい作品でした。

Cosmic Motors: Spaceships, Cars and Pilots of Another Galaxy
はしがき:Syd Mead
Design Studio Pr (2007/12)
ISBN/ASIN:1933492279

私が購入したのは英語のペイパーバック版ですが、英語のハードカバー版日本語のハードカバー版もあります。Amazonでは価格がそれぞれ2745円、4304円、6300円となっているのでついつい一番安いのを注文してしまったのですが、日本語訳の必要はないもののハードカバーにしておけば良かったというのはちょっと後悔しているところです。

この本は「遥か彼方のギャラクシー銀河で生産されている乗り物」という設定で描かれた宇宙船やレーシングカーのアート集なのですが、Autodesk Mayaを使って描かれたという3Dグラフィックスのリアリティが半端なものではありません。それもそのはず、Danielはこれまでにいくつかのカーメーカーのコンセプトデザインを手掛けてきた人なので、自動車デザイナーとしてのバックグラウンドがあるわけです。

また、単なるメカの絵ではなくて、そこに乗組員や整備士という人間も登場していることで現実味が一層高まっているということもあるでしょう。これは実際のモデルの写真が合成されているわけですが、セクシーな女性パイロットの衣装などにも手抜かりがなく、非常にカッコいいものになっています。

数あるマシンのなかでも私が特に気に入ったのはDetonatorというバイクです。もちろんこんなものが走れるわけがないのですが、しかしどう見ても本物としか思えません。モデルの女性がまたがっているのを見るとなおさらですが、実はこれは絵でしかなく、モックアップですらないということなのですから、一体何を信じたらよいのかという感じです。メッキ部品の写り込みなどは、表現力の乏しい私には本当に素晴らしいとしか言えません。

巻末には見開き2ページのみながら舞台裏の様子が写真で載せられていて、ここだけ本当の現実を見ることができるようになっているのですが、そのモデルの撮影風景などを見てもやはりただの絵であるとは思えません。このクオリティに比べるとハリウッドの特撮超大作でもかなり手抜きされているのではないでしょうか。このレベルで映画を作ってくれとは言いませんが、Millenium Falconなどは見てみたい気がしますね…