耳かき手先の器用な人が羨ましい。

世の中には、かなり頻繁に耳掃除をしていないと気が済まず、少しでも耳垢のある状態が許せない、という耳かきフェチのような人もいるようですが、私は子供の頃からどうも耳かきが苦手でした。母の膝枕でやってもらうのも自分が動いたら危ないということで妙に緊張してしまいましたし、自分でやるにしてもどこまで耳かきを入れていいのかがわからず、鼓膜に傷を付けてしまうのではないかという恐怖と常に戦わなければいけないのが嫌なのでした。

しかし道具としての耳かきにも色々なタイプがあって、モノ好きな私としては興味があったりもします。我が家では私が独身の頃に購入した写真左側の金属のものを使っていますが、ののじ耳かきは様々なタイプがあり、どれも独創的で耳に優しそうです。さらに、ファイバースコープで自分で耳の中を覗きながら掃除ができるものは高価なものになりますが、これなら鼓膜を傷つける心配もなく、耳垢を残さずきれいにできそうです。

しかし、やはりオーソドックスなのはスプーン型のもので、材質は竹のものが多いでしょう。観光地の土産物としてもよく売られていたりしますが、この耳かきの先端部分のスプーン状になったところはいったいどのように作っているのでしょうか。一見簡単なもののようですが、いざ自分で作って見ろと言われるとなかなか作れるものではないでしょう。

一昨日、ちょっと髪が伸びてきて汗をかいたときに髪が濡れるのが不快に感じられるようになったので散髪に行ったのですが、この行きつけの散髪屋さんは自分で耳かきを作ってしまわれたのです。その一連の顛末はブログに書かれているので、散髪してもらいながらその話をして実際のものを見せてもらいましたが、これはなかなか素人が作ったものとは思えません。飾りのない実用一点張りのものですが、スプーン部分の薄さや曲がり部分の剛性など、道具としての出来はまさに「匠」のものです。もちろんその道のプロが見ればケチを付けるところはあるのでしょうが、素人目にはこれに何千円の値札が付いていても疑問は感じないのではないかと思います。

出入りの問屋さんには「月産40本以上できたら仕入れさせてもらう」とまで言われたそうですが、これはあくまで趣味だからこそ自分の納得のいくまでこだわることができるのだし、いくらでも手間暇を掛けることができるのでしょう。40本というノルマを抱えてしまったら、それを達成するためには妥協も必要になり、今と同じ出来栄えのものを作り続けることも難しいでしょう。まあ、今のところ売るということはあまり考えていないそうですが、店頭のレジ横にさりげなく置いておいて、気に入った人にだけ買ってもらうという程度が良い加減ではないでしょうか。

ということなのですが、あまりに素晴らしい出来栄えなので褒めちぎっていたら、1本譲っていただいてしまいました。写真の右側のものがそれです。基準になるものがないのでわかりにくいのですが、左側のものと比べて小さいことがわかるでしょうか。普通の大きさのものも作られているのですが、こういったごく小さな物は普通に売られてもいないので珍しくていいです。しかしただ珍しいだけでなく、小さい分軸も細くてしなやかに曲がるので、優しく掃除することができる優れものです。素晴らしい!

ということで、軸も不必要に長くなくてかさばらないので、普段からキーボードの上に置いておいてこまめに使っていこうと思います。どこかにしまってしまうと億劫になりますからね。これまで苦手だった耳かきも、こういう気持ちのこもった道具があれば苦でなくなりそうです。