Anchorage「お客様の中にお医者様はいらっしゃいませんか〜」

快適な空の旅は順調に進み、何事も無く目的地デトロイトに到着するかに思えましたが、予期せぬ出来事というのは起こるものです。

予定されていた11時間のフライトも半ばに差し掛かったかという頃、普通なら寝静まっているはずの機内の様子がなんだか普段とは違う緊張感に包まれているような気配がありました。そうこうするうちに機内照明が点灯されアナウンスがあり、急病人が発生したので、迅速に手当を進めるために自分の席から立たないでくれとのことです。さらにしばらくするとまた機内アナウンスがあり、「現在アンカレッジに着陸許可を申請しており、許可が下りれば30分後に着陸して患者を降機させる」と伝えられました。

たまたま機内にいた医療関係者がこの急病人の診察をした結果、適切な診療機関での処置が必要と判断したとのことです。まるでドラマで見るような展開でしたが、実際にあるものなんだなあと変な感心をしてしまいましたが、考えてみれば数百人もの人が10時間以上一カ所にいれば体調が悪くなる人がいてもおかしくはありません。職業として旅客機に乗っている人にとっては、ままあることなのでしょうか。

アンカレッジ国際空港に着陸すると数人の医療スタッフがセキュリティスタッフを伴って乗り込んできて、数分後に患者は輿のようなものに載せられて連れ出されて行きましたが、特に苦しそうな様子は見られなかったので大事には至らずに済んだのではないかと思われます。その後燃料補給を済ませて出発するまで、地上にいたのは1時間半ほどでしたが、その他のロスを含めて到着の遅れは2時間ほどとなりました。最初は一体どれだけ足止めを食らってしまうのかと心配しましたが、案外スムーズに進むもので、クレーマーのような騒ぎを起こす者もおらず、乗客は皆極めて落ち着いたものでした。デトロイトからさらに乗り継ぎのあるような場合には大きな影響がある人もいるでしょうに、事態が事態と捉えているのでしょうか。

着陸している間は電子機器の利用が許可されていたので、私はiPhoneの電源を入れて出迎えに来てくれるKくんと妻にメール連絡を入れ、Facebookにアクセスして暇つぶしをしていましたが、こんな時にソフトバンク海外パケットし放題というものがあって助かりました。普通にローミングしてデータ通信をすると信じられない勢いでパケット料金が跳ね上がって行ってしまい、ちょっと使っただけで何十万円もの請求が来て卒倒するということがあったりするようですが、25MBまでなら1980円、それを超えるとどれだけ使っても一日2980円までというのは非常にありがたいものです。その分はソフトバンクが補償しているという事ではなく交渉の結果なのだと思いますが、それならそれで元の高額なローミング料金はいったい何が根拠になっているのかという疑問が湧いてきますね。auでも同じようなサービスを始めているようですが、料金が変わるしきい値が若干低いようです。

ちなみにアンカレッジ国際空港といえば、私がイギリスにいた25年ほど前には何度も利用したものです。冷戦中だった当時はソビエト連邦の上空が解放されておらず、航空各社は日欧間の直行便を自由に飛ばすことが出来なかったため、燃料補給のためにアンカレッジ経由モスクワ経由、もしくは中東などを経由する南回りの航路で行き来するしかなかったのでした。現在直行便では東京-ロンドン間は13時間ほどで結ばれているかと思いますが、アンカレッジ経由では実に17時間という長い長い旅となっていたので、それに比べたらずいぶん短くなったものです。当時はアンカレッジで一旦ターミナルに降ろされ、低い気温を感じながら針葉樹林以外何もない大地を見る展望台や日本人目当ての免税店を見て回ったりしていましたが、今回は機内に缶詰状態だったためそのターミナルがどうなっているのか見ることもできなかったのはちょっと残念です。