Michael Mooreいえ、私がそう思っているわけではないんですけどね。

一連の政治色の濃いドキュメンタリー仕立ての映画や書籍が好評を博しているMichael Moore監督ですが、政治的立場ややや強引な撮影スタイル、恣意的な編集などに反感を持ち、「反ムーア」を掲げる批評家やジャーナリストも少なくないようです。基本的に民主党支持の人なので、2大政党制で人々の支持政党がはっきりしているアメリカでは必然的に共和党支持者の共感は得にくいとは思われるのですが、それだけで半数程度の人を敵に回すことになってしまうというのはなかなか辛いものがありますね。それだけでなく彼の場合は人柄にも若干問題がありそうなのでますますアレなのですが…

ということで、そういう「反ムーア」側からのムーア作品への反論と、Michael Moore個人の問題を述べた評論などをまとめた書籍「アホでマヌケなマイケル・ムーア」を見付けたので、反対側からの意見も一応聞いてみるかということで読んでみました。

アホでマヌケなマイケル・ムーア
著:デヴィッド・T. ハーディ , 他
白夜書房 (2004/09/11)
ISBN/ASIN:4893679686

帯には

偽善者で扇動者のムーアに騙されるな!
時代の寵児マイケル・ムーアの虚実を暴く超・問題作!

と刺激的な文言が並んでいて、序文はデーブ・スペクターが書いているのですが…正直なところ、この序文が一番読みやすく、面白かったような気がしてなりません。

多くの人がバラバラに書いた文章を寄せ集めたものなので、同じことが何度も繰り返し述べられるのに食傷気味ということもあるのですが、問題なのはそこで述べられている「事実」が食い違っている場合もあるということです。また、著者の推測・憶測に過ぎないことを根拠に攻撃していたり、枝葉末節と思われる細かい事柄が厳密な真実は異なるというだけで主張全体に問題があるという論調が多く、まるで子供の喧嘩のようです。

おそらく根本的にズレてしまっているのは、「これはドキュメンタリーではない」ということを攻撃の主題に掲げてしまっていることなのではないかと思います。そんなことはムーア作品を賞賛する人々には分かり切ったことなのではないのでしょうか。私はまだ「ボウリング・フォー・コロンバイン」と「華氏911」しか観ていないのでその他の作品がどうなのかはわからないのですが、これらの作品を観た限りでは「ドキュメンタリー仕立てのコメディ」といった感じで事実をベースにおもしろおかしくMichael Mooreの政治的主張を映画にしたというように捉えました。それは決して「事実を淡々と、公平な立場で述べたドキュメンタリー」というようには見えません。もしそんな映画であればこれほど多くの人が楽しめるものにはならなかったのではないでしょうか。

ということで基本的なところから食い違ってしまっているので、どんなに反対意見を力説されても「ハァ?」というようなもので共感することは難しかったのです。従って、ここで反論している人々は私の目には「保守的で銃の所持を正当化するアメリカ人の典型」というようにしか映りません。また同じことの繰り返しが多いので、後半は読み進めるのもやや苦痛でなんとか読み切ったというような状況です。アフィリエイトリンクを張っておいて言うのもなんですが、まあ人様にお勧めできるようなものではありませんが、Michael Mooreの熱烈なファンで反対意見も知っておきたいというような人は読んでおいてもいいのかもしれません。きっとそういう人が読むと、なおさらMooreを擁護したい気持ちになると思うのですが、実はそれが真の目的だったり…ということはさすがにありませんよね?